今週のおすすめ本


ブック名 寂聴生きいき帖

著者 瀬戸内寂聴
発行元 祥伝社 価格 1365円
チャプタ
@自分らしさ
A日本の恥と危機
B日々の感動
C老いもたのし
D死ぬしあわせ

キーワード 自分、老い、感動、死、世情、生きいきノウハウ
本の帯(またはカバー裏)
切に生きるよろこび 感動するよろこび 感謝するよろこび

気になるワード
・フレーズ

・出家するには、それまで自分の暮らしにいつの間にか垢のようにくっついてしまった数々の 品や物や、心にかかえこんだ執着の心までも捨てなければならない。出家とは捨てることなりと 言っていいかもしれない。
・自分の作品をつくづく読み直して、私はまた忘れていた口惜しさを感じはじめた。 どうしてこの作品に〇〇賞をくれなかったのか、なぜ、この作品に××賞をくれなかったのか、 ああ浅ましいと、私は坊主頭を自分で叩いた。
・目に見える家、衣類、家具、そういうものを取り返すのに熱中したあまりいつのまにか 日本人は目に見えないもの、神や仏、人間の心や誇りというものへの畏怖を失ってしまった。

・報復の連鎖で、怨みに報いるに怨みを以ってすれば怨みの尽きることなしという釈迦の言葉の 様相を示してきた。
・この本を読みはじめたらやめられない。一気に読み通して、実に後味がいい。美味しいものを 食べた後に甘い唾がじっとり口中に湧いてくるようなあの感じである。
・何よりも、今日の憂いは今日捨ててしまい心にわだかまりを持たないことだろう。

・仏法は往生を大切にする。如何に死ぬかということが修業の究極の目的にある。 死ぬことを往生というのは、仏教では来世を信じ、この世で死ぬことは、あの世に 生まれ直すことと分別しているのである。
・本当に悟りを得た僧侶なら、往生することはむしろ喜びである筈だけれども、そうもいかない のが人間の浅ましさである。まして在家の人々が死を恐れ死を嘆くのは当然である。
・(尊厳死)肉親で愛情深い人々の中には、こういうことに抵抗を示す人もまだ 少なくないと聞く。それはその人たちが、やがて来る自分の老いの果ての死を真剣に 考えてみた時、自ずから答えが出てくるのではないだろうか。

・年をとって何より浅ましいのは、日々、感性が涸れ、鈍磨していくことである。

かってに感想
毎日新聞、京都新聞、東京新聞、文藝春秋等に掲載された随筆である。
「自分らしさ」が15編、「日本の恥と危機」が18編、「日々の感動」が16編、
「老いもたのし」が6編、そして「死ぬしあわせ」が9編である。
わがままを言わせていただくなら、「老い」「死」に関するものが、もっと読みたかった。

いつものごとく、随筆だから、どこから読んでも問題ないから、肩が凝らなくていい。
ありがたいのは、「老い」向けなのか、字が大きいのが助かるのだ。
気になった編は、お年のせいか、老いと死である。

意外なのは、出家してもいろいろ欲が出るし、なくならないということ。
特に最高だったのは、「捨ててこそ」で、「『捨てる...』技術」の本から、 「なかを見ないで捨てる」という捨てるノウハウを取り出すまでの過程がとても面白い。
「出家するには、それまで自分の暮らしにいつの間にか垢のようにくっついてしまった 数々の品や物や、心にかかえこんだ執着の心までも捨てなければならない。 出家とは捨てることなりと言っていいのかもしれない」なんて言いながらというのが、 最高なのだ。

そんなところを素直に表現されているところが、とても好きである。
老いてますます自分らしさを出して生きている人たちの言葉や、 自分らしさを全面にだして死を迎えた人々の紹介は、著名な方々とはいえ、 年を重ねてきた自分に大いに参考になる。

生きるヒントがあちこちに散らばっているのがとてもいい。ちょっとあげてみよう。
まずは、「居は気を移す」では、部屋の机の向きを替えて、気分を刷新なんてのを早速、もうすぐ 8年目を迎える単身寮でやってみることにした。
「日々新しい女になる」では、男に読み替えればいい。「捨ててこそ」では大いに捨てたいもの。

さらに「インチキ宗教の判別」では、金もうけをしてるかどうかだそうである。
さらにさらに「上手な老い方」では、五持つ(健康、目的、趣味、友、お金)なのだ。
さらにさらにさらに、「老いの戒め」での、健康法などにこだわらぬことだそうである。

おわりに、江戸時代の戯作者仙涯義梵の「老人六歌仙人」の言葉の一部を書き、老いてますます自重したいものであるかな。

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聞きたがる、死にとむながる淋がる
くどくなる気短になる愚痴になる
出しゃばりたがる世話やきたがる
又しても同じ話に子を誉める
達者自慢に人は嫌がる。

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