今週のおすすめ本 |
ブック名 | 箱根坂(上) |
著者 | 司馬遼太郎 |
発行元 | 講談社文庫 | 価格 | 599円 |
チャプタ | @若厄介 A京 B伊勢殿 C新九郎 D千萱 E駿河舞 F骨皮道賢 G一夜念仏 H兵火 I出奔 J早雲 K急転 |
キーワード | 応仁の乱、踊念仏、鞍、謡、幕府の体制、将軍と守護地頭の権威 |
本の帯(またはカバー裏) | 応仁の乱で荒れる京都、室町幕府の官吏伊勢氏一門の末席に、 伊勢新九郎、後の北条早雲が居た。 |
気になるワード ・フレーズ | ・この時代に生きた人で、筆者の名こそあきらかでないが、政道の荒廃と世相のさわがしさ を書いたものとして「応仁記」がある。 ・仏もむかしは凡夫なり 我等も遂には仏なり いづれも仏性具せる身を へだつるのみこそ 悲しけれ。 ・たれが通うてきてもいい。闇のなかの密事であるため、たれが自分を抱いているのか、においや 息づかいで、かすかに覚る。やがてたねを宿したとき、たれの子であるかという指名権だけは 娘たちの側にある。 ・教団になると、つねに組織を強化せねばならない。そのために一遍の思想がはなはだしく ゆがめられた。最高の法統である板木の相続者のことを代々「遊行上人」とよんで尊んできたが、 その権力と権威とありがたみをふやすために信じがたいほどのことだが、極楽に往生するかどうかは、 法主である代々の遊行上人がきめるという教学に変化した。このため、「過去帳」という地獄帳 がつくられた。 ・一遍念仏は、人のいのちがつかのまであることをしきりに説く。つかの間のことを、一遍が慣用 することばとして「出で、入る息の間」という。 ・経典は、阿弥陀如来というものの本性として願いは衆生を差別なく、救うことだ、といっている。 ・仏教は堕地獄とする罪の第一に殺生であろう。魚をとる漁師、猪を殺す猟師、みな地獄に堕ちる。 生計のために堕ちるなどと、もし仏がいったとすれば、仏などくそをくらえ。人は道を歩いても 知らずして蟻を殺し、刺されれば痒さのあまり蚊を殺す。それらはみな殺生であるために、蚊いっぴき で地獄に落ちねばならない。その蚊をとんぼが食う。とんぼは地獄へゆくであろう。 そのとんぼをつばめが食う。つばめは地獄必定である。 |
かってに感想 | またまた、歴史小説好きの先輩から、以下の事情により、私のところに回ってきた。 本を探索しすぎると、時々あることなのだが、同じものを買ってしまうこと。 その本なのだ。 今回は、司馬作品である。筆者の作品は結構読んできた。 筆者の作品がいつどれを読んでも面白いのは、ストーリーに出てくる時代の風俗等を細かく わかりやすく解説してくれることである。 ただ、登場人物のからみばかりが気になったり、劇画風にストーリーの速い展開を好む読者には、 いささか苦痛かもしれない。 歴史に興味がある人は、もちろんたまらない作品である。 1987年に文庫本化されて、2002年ですでに第36刷を重ねていることから見ても、 その人気のほどが知れようというもの。 司馬ファンがわんさかいるわけである。 物語は、応仁元年、とある村に住む「山中若厄介」と呼ばれる人物の登場のこんな文章から始まる。 「このあたりでは、山中小次郎のことを、だれもそのようによばない、『山中若厄介』とよんでいる」。 何も考えずに、この本を読み始めると、第三編まで彼の話が続き、つい主人公かと思ってしまう。 違うのだ。第4編から出てくる家伝の鞍作りの明け暮れ、毒にも薬にもならぬ人間、 室町幕府の官吏伊勢氏一門の末席「伊勢新九郎」なのである。 小次郎たちは、新九郎の成人した妹、「千萱」を送り届けるため、村を旅立つ。 さらに、「上巻」は、この小次郎たちの旅立ちに始まり、千萱(ちがや)と新九郎との出会い、 千萱の揺れる女ごころ、 足利義政の弟義視とのからみ、千萱と今川義忠との出会い、 応仁の乱の代理戦争をする骨皮党(東軍細川勝元)と御厨子党(西軍山名大全)、 その骨皮と新九郎、戦乱が続きこころの不安定さから踊念仏に没頭する民衆たち、 やがて、諸国を行脚し、「早雲」に改名する新九郎。 最終章「急転」では、妹千萱の夫、駿河守護職今川義忠の死で、諸国行脚の身から、 戦いの渦に巻き込まれそうな場面で終わる。 ストーリーとしては、次の展開が楽しみなところで終わっている。 読みながら、当時の流行もの「謡い」「今様」がたびたび出てくる。 これは「当世ふう」もしくは「当世の流行」という意味で、転じて 「今様うた」略して「今様」というのだそうだ。 戦乱時代とはいえ、公家生活の延長からか風雅のこころは忘られていない。 不景気でやたらスピードと効率化を求める時代の流行歌のようなものなのだろうか。 司馬流風俗等の解説は、「若厄介」に始まり、「今様」、「申次衆」、「密事と妻の指名権」、 「一遍死後の教団」、「過去帳」等々...。 読んでて楽しみ、興味はつきないのだ。 |
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