今週のおすすめ本


ブック名 悪党諸君
著者 永六輔
発行元 幻冬舎文庫 価格 519円
チャプタ
@一房・・・笠松刑務所
A二房・・・京都刑務所
B三房・・・沖縄刑務所
C四房・・・笠松刑務所
D面接

キーワード 女と男、老い、死、ボケる
本の帯(またはカバー裏)
前代未聞!永さん刑務所慰問集
塀の中の懲りない面々に、笑いあり涙ありの迷(?)説法の連続ライブ
気になるワード
・フレーズ

・男の胸に残っている乳首はお母さんのお腹の中で、最初の七週間女だったときのなごりが胸に 残っていて、男の乳首になっているんです。
・つっぱった太く短く生きるっていうじゃなくて、何か借りてることがあるんだったら、世の中に 返していく娑婆に返していく、何かちゃんと、返していくという生き方で、長生きしようという 決心をぜひつけておいてほしいんです。
・「あっ、うまくいった」というのとね。「あっ、いけねっ、これは困ったぞ」というのとあります。 その、うまくいったのと、困ったなあという、この感情の起伏ってものが、細胞を老けさせないの、 ということはボケないんです。

・花が咲いていれば見ることができる。誰かがくれば挨拶することもできる、曲がりたい横丁を曲がる というふうに、何もない暮らしの中に、歩くってことがとっても大事に入り込んでいるんですね。 そうすればお腹がすくし、健康だし、よく眠れるし...。
・トシをとったらもういいんだ。オレはジジむさくっても、と思っちゃダメ。絶対にどこか若々しい 年寄りじゃなきゃいけない。でも、その若々しさに無理があると、これはいけない。
・両足の付け根が割れて、付け根が割れてるところがふさがってとんがってくるとオチンチンになる。 チンポコになる。

・神経質になったり、ピリピリしたりしないで、おかしいなって思える余裕ってのがまず大事です。 つまり、笑顔、そう、笑顔があるかないか。どんな状況の中でも、笑顔があるかないかっていう ことが、とても大事になってきます。
・南無阿弥陀仏っていうのは、「誰かを助けてあげよう、誰かを助けてあげると自分が助かる」
・<老化の兆し10項目>
(1)体力がおちた。(2)好奇心が減ってきた。
(3)物忘れが増えてきた。(4)涙もろくなってきた。
(5)自責の念が強くなってきた。(6)悪口が増えてきた。
(7)無理に若々しく振る舞う。(8)もめごとを避けようとする。
(9)若者がうらやましい。(10)意味もなく焦る。

・<昭和一桁生まれの男がトシをとったなあと思うのは(28項目のうち 私に該当する一部を抜粋)>
(1)テレビに向かって怒る。
(2)テレビに出ている顔がだんだんわからなくなる。
(3)食事をすると何かこぼす。
(4)夜のメシを食いながら、昼メシに何を食ったか思い出せない。
(5)平らで何もない所で躓く。
(6)家族の会話に入れなくなった。
(7)叱る前に怒ってしまう。
(8)同じことを何度もいう。
(9)遠回しにものを頼むようになる。


かってに感想
筆者の作品は、初めてである。
かつて「大往生」という本がベストセラーになったが読んでいない。
ベスセラー嫌いの私には当然のことだったのかもしれない。

本といっても、中身は刑務所での講演集である。ただ、なぜだか、 刑務所の場合は、慰問になるらしい。
なぜ、加害者側なのに慰問となるのかわからない。
実に読みやすい。それは話し言葉のせいだろうか。

漫談のようでもあるが、実にウィットに富んでいて、聞いてる側によりわかりやすくする ために、繰り返し繰り返し話、最後にポイントをまとめる。
また、会場で聞いてる受刑者の表情が、括弧書きで拍手、笑、爆笑を入れてる だけで伝わってくる。
この括弧書きの多さからその説法の面白さはすぐわかるし、本で読みながら いたるところで笑えてくるから、その話法の素晴らしさに感心してしまう。

ただ、聞いてる諸君が、説法に聞き入るだけでなく、心を入れ替えて再度受刑者になっていないか どうかは定かではない。
それを確かめるために、筆者はあえて15年後に同じ刑務所に行ったのではなかろうが...。 反応がなかったのでどうもいなかったようではある。

それでは、この説法の面白かったところをあげてみよう。
まずは、人間は、すべておんなが原形であるということ。
七週間を経てチンポコが出てくるということ。
つまり、受精した段階ではすべて女なのである。
仏教で言うと、死んでから、七週間(49日)して、魂が彼岸に行く期間と同じで、 妙に不思議さを感じてしまう。

そして、老いる私にぴったりの面白い話、「老化の兆し10項目」と昭和一桁生まれの男が、 トシをとったなあと思う28項目に及ぶ話。これは思い当たるものがたくさんありすぎて困ったものだと思いましたとさ。
まだあった黒柳徹子の検便の話。これは大いに笑いましたです。

さらに、母親に救急車を呼ぶ話、ノミのサーカスの話。
座布団3枚の、爆笑もの、昭和一桁の「長生き会」の話。
会員が毎年一万円出して、最後に生き残った人が総取りなんだって。

一方、ボケを感じ始め、ボケないためにも、自分にいただきの話があった。
それは、三項目にわたるもので、そのひとつは、何でもいいから何かを作り続けることで、 それも失敗を重ねながらが良い。
二つ目は、できるだけ歩くことで、あいさつを交わしたり、自然を感じることが良い。
三つ目は、異性を意識するということで、無理をしない若々しさが良い。

おわりに、もちろん更正する人のために良い話。
覚醒剤から抜け出した作曲家中村八代の話、
次に、計量法に違反して、曲(かな)尺と鯨尺を売って歩き、どこかしこの警察へ捕まえてくれ と出頭していく話。
ほとんど本の内容を話してしまったかなあ。すみません、書店さん。
まあとにかく、軽妙洒脱な話し振りには、すぐに引き込まれてあっという間に、 受刑経験者・弁護士との「面接」のチャプタに行ってしまうのだ。読んでみてくだされ?!

<読み感記録>
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