今週のおすすめ本 |
ブック名 | 勝海舟(1) (副題)黒船渡来 |
著者 | 子母沢寛 |
発行元 | 新潮文庫 | 価格 | 700円 |
チャプタ | @開眼 A天悠々 B月明 C火焔 D草 E旅語 F送りまぜ G春の花 H犬蓼 I同胞 J菊花 K離合 L散花賦 M壬子図 N津走魚 O阿修羅琴 P菊月 Q紅い花 R夏風 S残る鳥 |
キーワード | 江戸っ子、身分の上下、蘭学、人情、貧乏、気風 |
本の帯 | 今だからこの人物 |
気になるワード ・フレーズ | ・師匠なんざあ誰だっていいやな。学問だって剣術だってすべて己が心掛け次第のものだ。 ・お信はなにも知らない。がとにかく、小吉が、今夜もまたなにか人からお礼を云われるような いい事をしたのだと、思うと、ただそれがうれしくてならないのだ。 ・世の中は溝川も同じもの、汚れたもの、穢ないものが、渦を巻いて流れています。 ・気はながく。心はひろく、色うすく、勤めはかたく、身をば持つべし。 ・学べただゆうべに習う道のべの、露の命の明日消ゆるとも、ってんだ。 ・女という奴あ、いつになっても小鳥の世話をする位の子供のような邪気のない優しさは忘れちゃ ならねえものよ。 ・素っ裸は、つまり人間の誠実ということだから、長い間の封建で日本は云われる通り、狡獪で ややもすれば小智恵を働かせようとする、みんな相当の智恵はあるが、事に対する誠が足りない。 ・おいら段々と年をとって来て、はじめてほんとうにおやじがわかって来た気がするんだ。 喧嘩もする道楽もするがそんなものを通り越したいいところが、たんとあったんだ。 |
かってに感想 | 戦中戦後6年を費やした作品、文庫本初版は昭和43年、 平成14年3月20日発刊のこの本で58刷目ということからして、超ロングセラーと言える。 現代人から言えば、一昔前のこの筆者の作品、私にとっても、もちろん初めて読む本である。 初めての人の作品は、読み手としてその癖というか、展開と言うかそれに慣れるまで ちと時間がかかり、場合によっては投げ出してしまうことだってある。 ただ、久しく長編歴史小説は読んでいなかったので、飢えた状態で比較的スムーズに入っていけた。 比較的時代が近く、歴史上の人物としては、申し分ない。 本を読みながら、50年以上前の作品だから、古い言葉使いのため、少し慣れるまで力が要る。 それに、生っ粋の江戸っ子の江戸弁・ベランメー調がなんとも小気味よいのだが、言い回しに慣れるのに、 これまた少々時間を要す。 ストーリーとしては、歴史好きな私は、ついついのめり込んでしまうのだ。 主人公のおやじ「勝小吉」の江戸っ子ぶり、貧乏と宵越しの金は持たないというか、 面倒見のよさ、気風のよさが、まずは笑いあり涙ありのストーリーの初めとなる。 時代背景は、黒船来航前後、武力もなく、官僚化した江戸幕府、人材登用もままならない中、 下級武士から蘭学をキーに大きな変化が起こりつつあったのだ。 物語の始まりは、剣豪島田虎之助に弟子入りし、武術に励む主人公麟太郎の日常風景から。 そして、おやじ小吉の背中(人情味あふれ、面倒見がよく、いろいろな人から慕われる)を見ながら、 蘭学の師永井青崖との出会い、蘭学を学ぶものへの逆風も経験しながら、成長していく麟太郎。 新しい出会い(纏持ち岩次郎、妻おたみ、杉純道)とおやじの死、虎之助の死を体験し、やがて、 幕府に見出されて鉄砲を作り、そして小普請勝麟太郎として長崎伝習所へと出かけ、 オランダ人から航海術等を会得していくまでの話である。 いつもながら、歴史小説は、ついついのめり込み、あっという間に読み終わり、次の巻が読みたくなる。 歴史の裏舞台で活躍した主人公を描く、吉村昭とは違い、誰もが、明治草創期に活躍した人物を挙げる としたら、たぶんこの人をあげるだろうと思われる人物なのだ。 偉くなってしまうと面白さは半減してくるのだろうが、 歴史が大きく動いている時代に出てくる人物と言えども、その下積み時代の激しいほどの努力があって こそと思わされる、第一巻である。 読みながら、ついつい涙を誘われてしまったり、麟太郎がこれからどんな問題にぶち当たり、どんな 解決をしていくのか、、本屋に急ごうっと。 |
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