今週のおすすめ本


ブック名 定年ゴジラ
著者 重松清
発行元 講談社 価格 729円
チャプタ
@定年ゴジラ
Aふうまん
Bきのうのジョー
C夢はいまもめぐりて
D憂々自適
Eくぬぎ台ツアー
F家族写真
帰ってきた定年ゴジラ
キーワード 定年、セカンドライフ、家族、少年・青年時代、趣味
本の帯 暇があっても退屈ではない!老朽化したニュータウンで第二の人生を歩み始めた定年四人組の物語
気になるワード
・フレーズ

・「ひとつ屋根の下に住むとやっぱりいろんなことが出てくるからな、おせっかいかもしれないけど、ヤマちゃんのところも二世帯住宅には気をつけなよ。建てた後で揉めるとほんとうにどうしようもないから」
・「しょうがないんだよ、ノムちゃんはあの家の浦島太郎なんだから」
・「でも逆に考えれば、ノムちゃんがいなくても息子たちはまっとうに育ったわけだろ。それ寂しいことだと思わない?だって親父は必要なかったってことなんだから。自分がいなくてもまっすぐ育って欲しいとは思うけど、心のどこかで、自分がいなくちゃ駄目なんだっていうのも欲しいのでは親って」
・「去年の12月だったかな、定年退職してすぐに。ほら最近多いでしょ。定年離婚、奥さんのほうから言い出したんだって」
・すべてを許してくれる人がいるんだと信じていられる場所がふるさとならば、この街の、この家を、娘たちのふるさとにしてやりたい。信じさせてやりたい。どんなに困り果ててしまっても最後の最後に帰っていける場所が、ここにあるのだと。
・「ヤマちゃんよ、あんたのご趣味はなんだい?散歩以外になにがあるのかい?あったらひとつご教示願えますかなあ。まあないと思うけどさ。ないでしょ?ね?・・・」
・いつもの朝が、いつものように過ぎていく。いつまでその繰り返しがつづくかは誰も知らない。
・マウスのポインタが止まった。正真正銘のフリーズ。頭に血が昇った山崎さん。ついにパソコンのコンセントを引っこ抜いてしまった。

かってに感想

定年を最近迎えた主人公と、ニュータウンに住む登場人物たちとの出会いから始まる。
定年を迎えた人たちは、団地内の行動でそれなりにわかるものらしい。
主な登場人物は、主人公の元銀行員、広告代理店の営業部長だった町内会長、デパートの物産展好きの長年単身生活をしてきた元運輸会社員、このニュータウンの開発仕掛人だった元開発課長である。
そして、このニュータウンにおきる出来事、登場人物自身に起きる出来事・回想、そしてその家族に起きる出来事、極めて日常的な話である。
笑えたり、怒りたくなったり、なんとなくさみしくなったり、思わず自分の家族は、妻はとかと考えながら、大いに共感できるのだ。
運輸会社員は、長年の単身生活からいろいろな地方の言葉で話したり、土産物を仲間におすそ分けしたりする。
その中には、岡山弁、きびだんご、祭り寿司、大手まんじゅう、ままかり等が出てきたので、私は簡単にストーリーの中に溶け込んでしまった。
長年それぞれの企業で中心となって働いてきた人たちは、なかなか地域の輪の中には入り込めないものだ。
このストーリーのようにうまい具合に出会いがあればいいがと思ってしまう。
主人公の娘が妻子ある男性との結婚を妻とはすでに相談していたが、父親として許すまでの話もないとは限らない話だろう。
町内会長がニユータウンの実態調査をマスコミに許して大騒ぎとなる話、大学の社会人講座で居眠りをしてしまう運輸会社員の話、孫とそのともだちの会話で「ぶらぶらしてるの!」に傷つく町内会長の話、団地から北海道へ移転を決意する元開発課長の話。
そして、2年後を描いた「帰ってきた定年ゴジラ」では、無趣味の主人公がパソコンに取り組む話は、自分も経験してきた話だけに特に興味深く読んだ。
プロキシサーバー、アカウント、マウス、ポインター、フリーズ、メールソフト等。フリーズして思わず電源を切ってしまう場面や送信したメールの返信がないので届いていないのだと思ってしまうところには、思わず苦笑してしまった。
やがてはこんな言葉をはくだろうと、定年後の自分を想像してしまった、次のフレーズを紹介してみよう。「三十代や四十代の頃は、老後など遠い彼方の日々だった。二十代に比べれば切実なリアリティーがあったのは確かだが、まだまだ『こんな感じかなあ』という想像の範囲だったのだ。甘かった。なめていた。一日24時間がこんなにながいものだとは知らなかった。この街がこんなにも退屈だとは知らなかった」

<読み感記録>
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