今週のおすすめ本


ブック名 なんでこうなるの
我が老後
著者 佐藤愛子
発行元 文春文庫 価格 450円
チャプタ 19チャプタからなる
キーワード 老いの日常、孫の守り,霊の世界,大殺界へのチャレンジ
本の帯 よしッ,この家をぶッ壊そう!!
吉と出るか,凶と出るか?古希目前に決意したわが家の建て替え。何が敵か分からねど,またもや始まる戦いの日々
気になるワード
・フレーズ

・自分で見えたり聞えたりしないからといって,見えたり聞こえたりする人をうさん臭いやつと断定するのは傲慢というものではないか。しかし神への信仰よりも科学への信仰厚い人が大勢を占める日本の現状では仕方のないことだ。と経験者は嗤い者になることに甘んじている。霊の世界はあるのか,ないのか,人間は死後,無になるのか,死後の世界があるかないか。すべて論証できなければ認めない科学信奉者の前では我々体験派は「死んでみなされ,そしたらわかる!」
・まことに情けは人のためならず,だ。計画性のない人生の面白さは,こういう意外性にある。しかもこの喜びは,保険に入っていたことを忘れていたことによって,倍加されている。
・日本人は今や科学の奴隷になり果てた。己れの便利快適のみに走り,平気で山を崩し海を穢し,損得を至上の価値観とし,お題目のように優しさを口にするばかりで,傲慢この上ない人間になってテンとしている。この国上を覆う穢れを浄化するためにはもう地震しかなくなったのだ。
・そもそも文明の進歩とは何であるか!何を目的にこの進歩があるのだ。便利快適,それが人間の幸福か,え?幸福か。科学の進歩で人間は長命を得,それでいてポックリ寺へお参りしてポックリ死ぬことを祈念し,それでいて健康診断を受けては,血圧,コレステロールの数値に一喜一憂し,血圧安定剤を飲みつつ酒も飲んで,そうして竹フミに精を出す。いったいこれはなんなのだ。これが幸福というものだというのか!

かってに感想
テレビの画面でいえば,主人公の愛子ばあさんが, 右から出てきたかと思えば,左へ消え,左から出てきたかと思えば右に消える。
その繰り返しも生半可ではない。とにかく忙しく駆け回り,あっちに文句言っているとこっちが気になり,こっちに文句を言ってるとあっちが気になる。
そのあっちとこっちにいろいな出来事が起こるのである。
昼の時間,文庫本を読みながら,大きな声で笑えないので,ひとりニタニタとしていたのだが,気付かれたかな。
特に最高だったのは,愛子ばあさんが裸で風呂から出てきて電話口に出て,風呂場で急いで返り,転倒,不謹慎にも思わず70才のおばあさんのとどの姿を想像してしまった。
さらに同じ家に住む,甥との退去トラブルでいきがかり上から,「70才にして建つ」家を建て替えるという,暴挙ともいえる行動に出るのだからすごいバイタリティである。
さらにさらに引っ越しの荷物の片付け中に,人生相談の電話が入る。不治の病になった娘の夫がホストクラブに,そこで月百万円を出すという64才のおばさんとの性交渉で35才の娘婿のムスコが立つだ立たないだという下りは,はしたなくも単身寮で大声で笑ってしまったのだ。
その後が少し気になったのは,20数年前に保険屋に同情して掛け,すっかり忘れていた保険契約の満期通知 が来たが,その証書がない事件。余計なお世話だが満期金は受け取ったのだろうか?
それからラップ音を出したり,トイレットペーパーのいたずらをする狐霊は,チビが死んでからどうなったのだろうか。
大物の気配が漂い,ダサい幼稚園服を着て,セーラームーンを演じる,孫の桃子のその後が気になるのだが・・・。
つぎの連載を是非早く読みたい。こんなに面白いエッセーは,一人だけで楽しんではもったいないと思う。是非妻に読ませてあげよう。
終わりの解説が面白い。この人どうもSF作家みたいである。
少しフレーズを紹介しよう。「『こらっ』と怒られた気分でした。本の中から声が聞こえてくる。活字が刺々しく紙に刺さっている」という表現は,まさにその通りでこのエッセーにぴっ足しなのだ。

<読み感記録>
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