今週のおすすめ本 |
ブック名 |
我が老後 |
著者 | 佐藤愛子 |
発行元 | 文春文庫 | 価格 | 420円 |
チャプタ | 19チャプタからなる |
キーワード | 老いの日常、ボケ、癒しのペット |
本の帯 |
妊娠中の娘から二羽のインコを預かったのが、我が受難の始まり、けたたましく啼くわ人の耳は齧るわで、平穏な生活はぶちこわし・・・ |
気になるワード ・フレーズ | ・私はダイニングテーブルにおせちの重箱を置いた。それは大晦日に娘と二人で作ったものだ。・・・まったく娘なんて厄介をかけるばかりで,クソ役にも立たぬ。黒豆も私が煮た。煮しめも私がこしらえた。コブ巻きも鰊を巻いて煮た。錦玉子も私が作った。娘は何をしたか。カマボコを切っただけじゃないか。 ・ヤキソバをツユソバにして食べたのは,ボケ現象ということになるかもしれないが,それというのも白内障であるための注意の放棄が,ボケ現象を呼んでいるのではあるまいか。私はそう思いたい。それから十日と経たぬうちに私はカビ羊羹を客に食べさせてしまった。 ・直下型地震がどーんときて,・・・・東京壊滅型の時が来たのだ,と思った。だとしたら起きたところでしょうがない。(それに腰が痛い)東京が壊滅するのなら,どこにいても同じだから,寝ていよう。 ・現在ボケの,最たる現象は固有名詞が思い出せないことである。もう少し正確にいうと思い出せないことを思い出そうとする努力をしなくなったということだ。 ・「捨てればいいじゃないの,なぜ捨てないの・・・」と娘はいうがそれができるくらいならこんなに苦労はしないのである。どうしても私は物が捨てられない!勿体ない! ・眠っていた私は締めつけられるような背中の痛みで目が醒めた。・・・だがついにくるものがきたのか。そう思いつつ呼吸を止めて痛みに耐える。これが死にいたる痛みなのかな,と思う。いよいよ一巻の終り,幕を引く時がきたのか。 |
かってに感想 |
普通一人暮らしのおばあさんにはあまりばたばたと事件は,起こらないはずと思うのだが,著者の家はいささか趣が違うようで,毎日おこるさまざまな出来事のエッセーなのである。 それも何か,ドタバタ喜劇を見ているようである。 登場する人間は筆者ご本人と娘と孫の桃子とお手伝いさんと娘婿が少し。 主役はペットであるはずの犬のチビとタローとグー,いんこのピーとプー,そして孫の桃子だ。 なにせ相手は人間の言葉がわからないのだ。もちろん孫も生まれたばかりの時からと一才ぐらいだから言葉が通じない。 それにしても普通のおばあさんなら,こんなに行動的にはなれない。 また,それぞれのチャプタを読みながら実に観察力がするどい。 特に長年同居している犬・チビとの格闘場面とチビの行動を知り尽くしているはずが,敵もさるもので,その裏をかいたりお手伝いさんを味方に入れたりと。 チビのすることが気に入らないことばかり,タローのめしを食べたり,戸をかってに開けて家の中に入ったり,いつも食べてばかり,いい年をしてタローに発情し,セックスを強要する。 ペットと言えば癒し系なのだろうが,どうも日常のけんか相手ということなのだ。 二匹の犬で十分なのに,娘がピーとプーの 同性のインコを連れてきたからまたまた大変。 プーがピーを籠の中で頭をつつき回しいじめるのだ,先生いたたまれずピーを籠から出して部屋の中で遊ばせ,プーを一匹に。 そして,さらに犬のグーがやってくるのだから。 執筆をしながらその合間に,遊んでいる,遊ばれている,いや癒されている,おちょくっている,からかわれている,それとも動物虐待か。 まあどう判断するかは,読んでから判断されればいい。 誰に煩わされることなくひとりでゆったりと執筆活動をしたいように思えるのだが,どうもほんとのところよくわからない。 読み続けるとどうも楽しんでいるようにも思えるのだ。間違いなくエッセーになっているのだから。 一人での寂しい生活が好きでない人には,けんかのできるペットをおすすめしますといっているようなものなのだ。 日常の犬・鳥・孫とのやりとりがイメージでき,思わずニタニタと笑いながら,最後まで読んで・・・。 最後のチャプタ「いつもと同じ朝」では,心臓の疼痛から死期を悟る部分と突然死んだ自分がどんな状態で発見されるのかその時の周囲の人間の表情等。 そして,知ってるつもりでの兄サトウハチローの話が小綺麗に感傷的にまとめられていることが気に入らないこと。なんだかんだと思いながら,疼痛も治まり眠りに落ちた。 そして,なにごともない朝が,チビとタローとお手伝いさんのいるいつもの朝が・・・ |
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