• 逢沢 明作:ネットワーク思考のすすめ
・21世紀は「ネットワーク」がキーワードになる。全くそのとおりだと思う。ネットワークは特段新しい言葉でもない。日本人は縄文時代から(?)この分野を得意とし、ネッワーク好きでもあると筆者は言う。人と人との交流、異文化の交流でいいものがあれば、それを取り入れ日本的に加工するのが得意な日本人(マネ?)。
・いい意味で言うとこだわりがない。この独創性がなく主体性の無さから
20世紀後半、高度成長時代、そしてその後、日本は金の亡者(エコノミックアニマル)で国際社会のリーダーとなれるだけの存在ではないと、多くの批判を受けてきた。
・こだわらない、禅的発想のできる日本人は、21世紀における国際社会で中心的役割を担うようになるかもしれない。そんな夢を持たせる作品である。


  • 佐江 衆一作:黄落
・老いていく人間の姿、その心の動きと肉体の変化を細かく描写し、年を追うごとに子供のようになってゆく父母に自分の将来を投影させる。妻に親の面倒見で苦労をかけたくないが、ついつい仕事に理由をつけてまかせてしまう。妻との緊迫感のある会話には身がつまされる思いがする。男と眼から見た介護への妻と自分のかかわり方、介護をするのは誰かを問いかける作品。
・年老いていく両親、理想の死の迎えかたを母に見、老骨になっても、色恋に元気な父に老いの醜さを感じる。仕種が父に似ていると妻から言われ、父に似たくない自分、一方で自分も向えつつあるどうにもならない老い。可愛い母にはやさしく、見にくい父には厳しく。やはり年老いても人間可愛いくなくては人の優しさには触れられないのかと思うことしきりである。
・母への優しさの表現では、特に母の母校から黄落のひと葉をもちかえり、母にその落ち葉を握らせる場面がある。胸が厚くなるものを感じながら、この優しさの表現は自分にはできないだろうと思ってしまった。
(漢字の宿題)あなたはいくつ読めますか。ほんの一部披露
盥、耄碌、胡散臭げな、蹲る、錘、卓袱台、襞、鉦、錦繍、欅
…………


  • 堀田 力作:心の復活
・日本人はボランティアは無償でにこだわりすぎていないか。
・無償財は論理として公平であることを絶対要件とするものではない
・人の欲求のうち愛、尊敬、自己実現といった精神的欲求の多くは人とのふれあいによって満たされます。
・ボランティアは基本的には行政に任せるが、あまり多くは期待しないという考え方


  • 木村 尚三郎作:ご隠居のすすめ
・隠居ということば自体が陳腐化している。世の中高齢・少子化時代を迎え、サラリーマンなら定年(55歳)を迎えても20年以上の人生がある。昔の隠居さんと言えば、息子に財産を譲って悠々自適の生活を送ることと定義されようが、家も買えない、年金も危ない、健康保険も破綻、定年後の生活にいい話、見通しがたたない。会社では上がつかえ(老獪な隠居しない人間がいっぱい)、いつ出向さされるかわからない。ローン抱える身にはその日の生活も危うい状態なのである。
・はっきり言って団塊世代にとっては死語といってもいいだろう。
・サラリーマンの定年は55歳から60歳に、さらに第二の就職で65歳となろうとしている。筆者は伊能忠敬が50歳で隠居したことを意識しているのではないだろうか。
・「物、時間、情報から自由になりなさい。」いわゆる流行り言葉で言えば「人間もある時期になれば規制緩和をしなさい」ということと理解すれば、結構面白い。
・21世紀は大移動の時代、自分の居場所を2つ持っているのは21世紀的な生き方。自分自身をふりかえるための自分の時間をもつためには、ごく自然に2つの住居をもつことなのかもしれない。そういった意味から単身赴任というのは、孤独感はあるが、一人の人間として過去、現在、将来を考えるいい機会なのかもしれない。


  • 住井 すゑ作:いのちに始まる
・とにかく気になるフレーズが多い。一語一語噛みしめながら、最後まで一気に読んだ。
・この作品には「橋のない川」を書いた著者の考え方の原点がある。真の平等とは何か。人間の生き方、可能性、社会の制度、自然の摂理、宗教等チャプタの終わりあたりに思わず納得できるフレーズが出てくる。
・特に気になるフレーズは、「気になるフレーズ」のところに記載したが、
44才を過ぎてから、やっと新しいことにチャレンジしている自分にとって、勇気づけられる言葉が多い。
・最終章で「人間棺桶の蓋をされるまでわからない」の中で「人と人のめぐりあいの循環には人間の企て以外に何か自然のものがある。」は、半生しか生きていない自分ですら、人の出会いには不思議なものを感じている。
・住井さんは95才を迎え、なお「橋のない川」第8巻を執筆中である。その意志の強さと平等な社会の建設に向けて、自分の信念を貫き通す力には感嘆する。
・このホームページを作成した後、住井さんの訃報を聞いた。「人間棺桶の蓋をされるまでわからない」と言っていたご本人は満足の
いく一生だったのだろうか。いや「人間平等の思想」を貫き「橋のない川」を読む限り、常に前向きに取り組んできた人だけに、一日一日を大切に生きてこられたと思う。満足のいく……とは愚問である。終わりに静かにご冥福をお祈りしたい。


  • 井上 宏ほか作:笑いの研究
・21世紀高齢者・少子化社会を向える日本。現状の高齢者(老人介護)問題を適確に分析し、北欧型の福祉に学び、国の施策に対する提言がなされている。
・戦後のベビーブーム時代に生まれ、21世紀に高齢者を構成し、家族の中に寝たきり老人がいる身には、著者の高齢者医療に長年携わった経験からくる適切なアドバイスと、高齢者福祉制度の多面的な分析・解説はとてもありがたい。
・後半部分の「福祉のやりすぎ」で国の経済が破綻した例はない。福祉は経済を成長させる。社会保障には「得も損もない。」といった指摘は、政治家やすべてを損得で図る現代の日本人には耳が痛く手厳しいものである。
・しかしなが゜ら、高齢者時代を暗く重苦しいものに考えがちな現代の傾向に、明るく前向きにとらえる逆の考え方が示され、とてもいい話である。


  • 江坂 彰作:3年後サラリーマンはこうなる
・題名のごとく21世紀のサラリーマン世界について環境、企業等でそ
れぞれこうなると予測した本である。
・筆者の作品は「課長復権」「人材殺しの時代」「冬の火花」等のサラリ
ーマンへの提言本が多いが、自分自身の左遷(?私のようなレベルの人間からすれば左遷とは思えない)の経験から、サラリーマンに対し
暖かい助言と声援を送る内容となっており、実にうれしい。
・一方、マーケッティング調査の経験が豊富なことから、特にバブル期
に3つの失敗@東京が世界の金融都市になれなかったA情報革命の
誤読Bジャパニーズライフスタイルがない。そして、これからは戦国時
代と同様に能力主義とアクティブな社会になるという部分について、分
析の鋭さを感じると共に、団塊世代にとっては厳しい冬の時代の到来
を感じざるを得ない。
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