今週のおすすめ本 |
ブック名 |
「健康」という病 |
著者 | 米山公啓 |
発行元 | 集英社新書 | 価格 | 693円 |
チャプタ |
@半健康ではいけないのか A危険因子はほんとうに危ないのか Bダイエットにおける幻想 Cスポーツはからだにいいか D人間ドックは役にたっているか E薬は効いているか Fストレスはからだに悪いか G健康という欲望 |
キーワード | 危険因子、ダイエット、スポーツ、人間ドック、薬、ストレス |
本の帯 |
あなたも「健康病人」だ! 人間ドックは役に立たない? 薬はキチンと効いていない? ストレスは身体に悪くない? |
気になるワード ・フレーズ |
・先進国の現代人は食べる、住むといった基本的な欲望が満たされたように見える。その次に興味を示すのはなかでも健康というものであろう。健康はある部分はお金で解決できるが、お金だけでは手に入れられないのが現実である。だからこそ「永遠に健康でありたい」という欲望は、いつになっても存在し続けるだろう。 ・昭和40年ころまでは脳卒中死が多かったが、減塩などの食餌療法の教育と普及により、血圧降下剤が広く使われる前から死亡率は低下していた。 ・医学はそういった、新しい基準をいくつも作り出してきた。そこにまた医学の新しいビジネスが生まれることにもなってくる。新しい検査ができれば、新しい異常が見つかり、いや見つかるように設定され、医学的な意味とは別に、新しい利益を得る医療関係者を生み出すことになる。 ・健康であることを求め続ける、あるいは健康でなければいけないという論理は、長生きすることこそが、人生の最大の目的であるという考え方につながる。 ・目的を失った、目的が見えない人が多い状況で、心の健康まで入り込むことがいかに困難であるかわかる。逆に病気があろうとなんらかの目的が持て、それを達成できるように努力できるなら健康である。つまり、健康とは自分自身の意識の問題である。 ・健康でいたいというのは、あくまでも自主性を持ち、自分で生活でき、人生を楽しめるというごく当たり前のことが前提なのであるが、まだそれが統計としても、医学的な治療方針に十分生かされてはいない。つまり検査や、医者が規定することが健康ではなく、ひとりひとり生きる目的の達成感が無理なく得られなければ意味がないのだ。 ・結局のところ、スポーツをすることが確実に寿命を延ばすというデータではない。確実にスポーツ選手が長生きとは言い切れないのが現状である。少なくとも長生きのために、スポーツをやるというのは意味がないだろう。 ・健康管理の難しさと医学的な事実だけでは、人間の健康維持は難しいことを示している。生活に干渉されることがストレスになるのだ。人間は自由に生活することで、感染に対する抵抗力を持てるようになり、健康な生活をしているという依存心がかえって、不健康を作ることになると考えられた。 ・本来どんな薬でも副作用があり、それをうまく回避しながら、使用していくものだということをもう一度考えるべきである。完全に副作用のない薬というのは存在しない。 ・ストレスはみな悪いもののように考えてしまうが、大切なのはストレスにさらされている時間である。仕事の問題や家庭内の問題のように長期的にストレスにさらされるようなら、それを早く断ち切る努力が必要になる。逆に断続的なストレスは、適度な緊張を作り、仕事をやり遂げるための意欲となる。それをうまく利用して、生活していくのが知恵でもあるのだ。 ・医者知らずこそ現代の健康なのであろうが、いまは医者知らずでいることが、非常に難しい時代である。自分がいくら健康であると確信しても周囲からさまざまな過剰で曖昧な情報が入ってしまい、冷静に自分の健康を信ずることのできないのが現代ではないだろうか。 ・健康診断や人間ドックというある意味では無駄な医療費、あまりにも過剰な信頼を寄せてスポーツをすること、薬に安易に頼ること、すべてそこには人間の欲望としての幻想の健康づくりが見え隠れする。 |
かってに感想 |
「衣食住足りて礼節を忘れた」平和ボケの日本人、世の中でいま老若男女に関係なくもっとも関心があるのは「健康」であろう。 このテーマでいうようにほとんど健康に関して病気状態ではないだろうか。 フィットネスクラブ、健康グッズ、健康ランド、健康食品、健康診断、人間ドックなどはいまではほとんど年齢に関係なく受診しているのではないだろうか。 この本で言うように「健康」を定義すると結構不明確なのだ。さらに人間の体を調べる技術−遺伝子による罹病がわかる、MRI−はどんどん進む、一方で、ではどこまでが正常なのかという基準作りが追いついていないということらしい。 この基準設定によっては、製薬会社の売上げ高や病院経営にも大きく影響することになるのである。 この本の趣旨は、健康の名のもとに、悪者扱いにされている塩分を含む食事やたばこや酒などの危険因子、ストレス、逆に健康維持のためには必要だとされるスポーツ、ダイエット、人間ドック、薬をそれぞれ逆の切り口で分析しいるのである。 筆者の理論展開の中には、結局、健康に関することはいろいろあるが、QOL(生活の質=クオリティー・オブ・ライフ)はどうなのかということにつきる。 そして、医者も決められない健康基準は「自分の満足する健康論を自分で見出さなければならないということだ。健康であるということの答えはどこにもなく、あるのはその人の生き方のなかにあるのではないだろうか」ということらしい。 とはいうものの、何かに依存して生きてきた私たちにとって、また死生観に乏しい現代人・日本人にとって、自分の健康感をもつことはかなりむつかしいことといえるのではないだろうか。 おわりになるが、この本には健康に関し、いままで誤解していたことをあらためて教えてくれるフレーズが多くある。「気になるフレーズ」にたくさん載せたが、さらに気になる人はこの本を買って読んでもいいのではと思うがどうだろうか |