今週のおすすめ本 |
ブック名 | ヘタな人生論より徒然草
(副題)賢者の知恵が身につく”大人の古典” |
著者 |
荻野文子 |
発行元 | 河出書房新社 | 価格 | 1575円 |
チャプタ | @観る Aつき合う B捨てる C暮らす D高める E極める F生きる |
キーワード | 女、酒、うわさ、迷信、友、欲、老若、住まい、ペット、品性、感性、心 |
本の帯(またはカバー裏) | 兼好法師流「賢く生きる」ための 絶妙なるバランス感覚がここにある! |
気になるワード ・フレーズ | ・「情報社会」という流れの速い河の岸辺に立って、「呑み込まれる危険」と「取り残される不安」 の板挟みに葛藤する現代人。 ・吉凶は、人に拠るものであって、日に拠るものではない。 ・無知な人間は、教養人や権力者の視点に惑わされ、付和雷同に陥りやすい。いっぽう教養人を自任 している人間は、わずかのことにも神経を尖らせて、先走った論を展開したがる癖がある。 ・流言や迷信に人の心は躍らされてしまう。 ・思わぬ不幸を招く「知ったかぶり」と「付和雷同」。 ・若き者は怒濤のごとく、老いたる者は大河のごとく。 ・名誉欲、色欲、食欲はすべての苦悩の根源。 ・いつまでも順境や逆境に心身を労するのは、ただひたすら苦を去り楽を求めようとするがためである。 楽というのはなにかを好み愛着することである。この楽を求めることは、やむことがない。 ・わが身が死んだあとに財産が残ることは、知恵のある者のしないことである。くだらないものを 蓄えておいたのもみっともないし、りっぱなものはそれに執着しただろうと浅はかに思われる。 ・人間の身として、やむにやまれずあくせくするのは、第一に食うもの、第二に着るもの、第三に住む ところである。・・・人は誰でもみな病気になる。病気にかかってしまうとその苦悩は耐えがたい。 だから医療を忘れてはならない。 ・秋の月は、このうえもなくすばらしいものである。いつであろうとも月はこんなものだと思って、 ほかの季節と違う思いで月を見分けられないような人は、ひどく情けない心をしているに違いない。 ・古代の人は、その静止状態を「つれづれ」と呼んだ。「連れ連れ」の語源のとおり、ひとつの状態が 連続することをいう。つまり変化がない。退屈で手持ち無沙汰な状態である。なにもせずにすごす 「徒らな時間」という意味で、「徒然」の漢字が当てられた。 ・ひとりの時間をつくって、心を静め、心を清めることが大切である。「ひとりでは間がもたない」 とか、抵抗感の強い人は”重度の依存症”である。 ・座禅の「無我」の境地である。ひとり静まれば、雑念から解放され、心が浄化される。 兼好は、「つれづれな時間」こそが「人生の楽しみ」だという。 ・なすこともなく所在ない寂しさに任せて、終日、硯にむかって心に浮かんでは消えるとりとめも ないことを、なんということもなく書きつけていると、われながら妙に興が湧いてきて、取り憑かれた ようにもの狂おしい気さえすることである。 |
かってに感想 | 「つれづれなるままに」で始まる吉田兼好作、徒然草、現代で言う世相とその時代に 生きる人間模様にチクリの随筆。 この最初の言葉しか知らない私のような古典なんて大嫌い人間のために、 現代語訳を付け、さらにその解説がされている本なのだ。 この解説も筆者の身近な事例を織り交ぜ、よりわかりやすく表現されている。 人生も後半に入り、もうへたな人生論よりと言っても、いつ死が訪れても可笑しくないお年頃。 さてさて、賢者の知恵が身につくというのだが・・・。 読み終えて、セカンドライフをどうするか、そんなお年頃でもなるほどと 考えさせてくれるいくつかの教訓がある。 その教訓は後回しにして、そもそも兼好さん、坊主でありながら、世間の人間を よくよく観察していたものだと思う。 私が、かってに抽出したキーワード「女、酒、うわさ、迷信、友、欲、老若、住まい、 ペット、品性・・・」について、どのように情報収集したのだろうか、そのほうが気になる。 それに約700年も前に書かれた本なのに、当時の人間の生き方と 現代の情報化社会に生きる人間の生き方と大差がないことに気付くのだ。 ただ、当時は高齢化社会ではないから、現代人より圧縮された生き方をしていたかもしれない。 私のように歴史に弱く、知識の少ない人間からすれば、兼好が生きた時代背景。 あるいは、兼好さんに関するお話も織り込んで頂けるならば、よりうれしいのでありますがね。 そもそもこの「つれづれ・・・」の言葉さえ知らなかった。 どうも静止状態、ひとつの状態が連続することを言うらしい。 そして、兼好さんは、ひとりの時間をつくって心を静め、心を清めることを勧めているのだ。 忙しげな現代人にとって、耳の痛い話である。 と言っても約700年前もさして変わらないようである。 「蟻のように集まって、東へ西へと急ぎ、南へ北へと走る。・・・いくところがあり、帰る家がある。 夕べには寝て、朝には起きる。忙しそうにしているのは何事なのか、生命の続くことを貪り求め、 利益を求めて、止まるときがない」こんなフレーズがあるのだから・・・。 余談だが、この解説本は、「観る、つき合う、捨てる、暮らす、高める、極める、生きる」の 7つのチャプタからなっている。 原本も徒然草もこの構成なのだろうか気になった。 筆者が、まとめられたというのであるなら、実にわかりやすくお見事であります。 さてさて、気になる教訓。 まずは、「どんな女であっても、朝夕暮らして顔をつき合わせているとずいぶんと気に障ることもあり、 きっと憎々しくもなるだろう。・・・他所に住んだままで、ときどき通い住むなら、そのほうが年月 が経っても絶えない仲となるだろう」なんてある。 なんと単身赴任を奨励しているようなのです。ありがたやありがたや。 次に、「未熟な初心者こそ一流の人に混じって学べ」なのだ。 どういうことか、さらにくわしく「芸能を身につけようとする人は・・・まだまったくの未熟なうちから、 上手な人のなかに混じって、貶されても笑われても恥ずかしがらず、平気で押し通して稽古に励む人は、 生まれつきの天分がなくても、稽古の道で立ち止まることなく、また勝手きままにすることなく年月を 送るから、器用だが稽古に励まない人よりも、最後は上手といわれる地位に達し、人徳も備わり、 人に認められて、並ぶ者のない名声を得るのである」となる。 我流が好きな私、貶されても笑われても恥ずかしがらず、 セカンドライフでの芸事を先生について学ぶ教訓にしたいものである、なんて・・・。 次に気にいった短縮系フレーズ(小見出し)を羅列してみよう。 「なにもしない批評より偽善でも行動を」「人を質す愚かさ、わが身を正す大切さ」 「余りある財産は苦労と愚行をもたらす」「心を狂わす深酒、心を通わす一献」 「自然を感受する心が人間らしさを育む」「点でとらえずプロセスで見る」 「風に散る花のように人の心は移ろいやすい」「人生は一日として思いどおりにならない」。 「一生は一瞬の積み重ね、ひたすら今を大切に」「短い一生だからこそ、ものごとに優先順位を」 「大事なことを成し遂げるには、まず環境を整える」「悲愴な決意は空転のもと、重い決断こそ 静かな心で」 最後に「死と向き合って一日一日を丁寧に」、いかがだろう。 気になった方は、是非読まれるべし、きっと気になるフレーズが3つ以上は見つかるよ。 |