今週のおすすめ本


ブック名 いい人をやめると楽になる
(副題)敬友録
著者 曽野綾子
発行元 祥伝社 価格 1575円
チャプタ @人はみな,あるがままでいい
A性悪説のすすめ
B失礼,非礼の領域とは
C「与える」ということ「与えられる」ということ
D「いい人」やめるつきあいかた
E品種が現われるとき
F代価を払ってこそ手に入る関係
Gどうすれば他人の生き方が気にならないか
H憎しみによって救われることもある
I人は誰の本心も本当はわからない
Jあいからはなれたおやにならないために
キーワード 自立,性悪説,評判,平等
本の帯 縛られない失望しない傷つかない重荷にならない疲れない<つきあい方>
気になるワード
・フレーズ
・何がなくちゃだめだ,とか,だれがいなくちゃいけない,なんて思うのは間違いなのよね。何がなくても,誰がいなくても,人間は何とかやっていくんだから・・・
・自分の中にある醜い部分,嫌らしい部分をはっきり意識して,そのことに悲しみを持つ時,自然,その人の精神は解放され,精神の姿勢もよくなる。
・勝気で他人が少しでも自分より秀でていることを許せない人は,自分の足場を持たない人である。だからいちいち自分と他人を比べて,少しでも相手の優位を認めない,と頑なな姿勢を取ることになる。
・すべての人生のことは「させられる」と思うから辛かったり惨めになるので,「してみよう」と思うと何でも道楽になる。
・人間の老化度を計るのに「してくれない」という言葉をどれだけ頻繁に使うかだ,と私は言ったことがあります。これを「くれない度」と言うのです。
・人は男であろうと女であろうと,基本的には一人で生きて行けなくてはならない。それができない人は「自由人」ではなく,一人になったらどうしようかという恐怖に捉えられている「不自由人」である。
・運命や絶望を見据えない,希望というものの本質も輝きもわからないである。現代人が満ち足りていながら,生気を失い,弱々しくなっているのは,たぶん,絶望や不幸の認識と勉強が徹底的に足りないからだろう。
かってに感想 曽野綾子の作品は「完本戒老録」「中年以後」そして3作目のこの作品であ る。とてもインパクトのあるテーマでもある。
 だれしも人に対して「いい人」でありたいと思う気持ちは少なからずある。 よく言われるのは「外面がいい」という言葉がある。
 いずれの書も,老いて人に甘えるのではなく自らに厳しく,常に自立してい ること,することが念頭にあるようだ。そうであるなら人に対してあまりいい 格好をする「いい人」になる必要はないということだろうか。
 人は誰しも誰か甘えられる人を一人ぐらい作りたいものであるが,甘えられ る人というよりは,率直にものが言える相手が必要と説く。その相手には,気 を遣わなくていいし,縛られないし,話していても疲れない,・・・という本 の帯にあるつきあいができる。それが大切ということになるのである。
 といったところから,「性悪説のすすめ」「非礼」「他人の生き方が気にな らない」「憎しみによって人は救われる」といったチャプタのフレーズになっ てくるのだと思う。
 この本は決して新しく書かれたものではない。いままで作者が発表した小説, 随筆,新聞,雑誌の中のフレーズをピックアップしたものである。
 特に気になるフレーズが多かったのは「自分の顔,相手の顔」という随筆か らのものであった。そのフレーズについては気になるフレーズで照会したい。
 筆者がまえがきで「いい人をやめたのはかなり前からだ。理由は単純で,い い人をやっていると疲れることを知っていたからである。それに対して悪い人 だという評判は,容易にくつがえらないから安定がいい。」「いい人はちょっ とそうでない面を見せるだけですぐ批判され,評価が変わり,棄てられるから かわいそうだ。」「いい人を続けるのに飽きるか疲れてしまった方に読んでい ただければ,こんなにうれしいことはない。」というように,肩に重い荷物を いつもしょって疲れを感じている人には読めばすっとその荷物がとれていくか もしれない書である。
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