今週のおすすめ本 |
ブック名 |
心のくすり箱 |
著者 | 徳永進 |
発行元 | 岩波書店 | 価格 | 1680円 |
チャプタ | 主なチャプタ @プロローグ最後の薬 Aハマゴウの秋 B世間話し C思い出療法 Dおにはそとー Eないくすり F添い寝 Gようこそなあ H星 |
キーワード | 死生観,自然治癒力,自然 |
本の帯 |
人は誰でも体や心を病みながら,生き,成長し,病みながら世を去る。 しかし今,多くの人は医者に薬を処方してもらわないと体や心の不調は治らないと信じている。 ・・・・治癒とは何か,医療とは何か,そして人間とは何かを考える心温まるエッセイ集 |
気になるワード ・フレーズ |
・現代人の忘れ物はたくさんある。ひとつは,自分の体を尊敬することだろうか。ぼくらは体を尊敬することを忘れている。やみくもに薬を服用するのではなく体の持っている対応に敬意を持って見守ること,それを忘れているのではないだろうか。 ・もう一つの自然治癒力,大自然が持っている治癒の力,そのことが在るということも忘れているし,それへの感謝も忘れている気がする。星や風,海や光,それはかけがえない薬でもある。万人に平等に与えられた,値のはらない,ほんとうの大衆薬である。 ・死を前にしてもあるのは同じ日常である。日常の話しの方が心に響くことがあるような気がする。医療者としては「世間話し」が上手くこなせるというのは大切な技の一つかも知れない。 ・がんま末期,病院に入院していると,多くの人が自分をつまらない人間だと思い始める。何の役にも立たないどころか,家族や他人に迷惑をかける,とっとと死んだ方がいいとさえ思うようになる。・・・そんな時,何かのきっかけからか,患者さんが話し始めることがある。昔の思い出を語る。語りながら,・・・・と思い直していく。 ・リンさんは住みなじんだ古い農家の居間に敷き布団を二つ並べひざを重ね,永遠の眠りについていた。稲刈りの帰りに立ち寄った親戚の人たち全員が,作業着のままリンさんの死を見届けた。「昨日はこの布団の上で昼も夜もいっしょに寝て,モゴモゴいろんなことを話しました。先生,ありがとうございました」ほっとした娘さんの顔があった。 ・素直に感謝するということが難しい時代である。「この豊かな日本国に生れたことに,日本国民は感謝しなきゃ」「あの老人ホームに入れることに感謝してよ」・・・と,感謝を強制されては,感謝の意味も消えてしまう。感謝とは,湧くもの,ある時ハッと気づき,思わず手を合わせるもの,だろう。 ・夜空いっぱいに星,・・・雲の合間から光る星がある。・・・夜更けると満天の星ということもよくある。・・・そうとは知らず,窓を閉め,戸を閉めぼくらは空を忘れる。 |
かってに感想 |
筆者の作品は,「やさしさ病棟」に続いて2冊目である。「やさしさ病棟」は,メールフレンドにすすめられ読んだ作品である。 いい贈り物をもらったという気持ちで,少し涙が出てしまった。今回の作品は,岩波フェアで見つけた作品,心という文字に目が行き,作者を見ると鳥取赤十字のあの先生だとすぐ買い求めた。 本当に短い随筆が,110編,毎日新聞に連載されたものの単行本化されたものである。どこから読んでもいいのがいい。 終末医療を続ける医師が,日常的に体験する多くの人の死,みんな違う死の迎え方をしているのに,なぜか生に対する執着心が見えない。来るべものが来ているのだという迎え方。 この先生の表現の仕方がうまいのかもしれないが,実にさっぱりとした死の迎え方なのだ。前回の作品の中には年若くして死を迎える人が描かれていた分だけ涙を誘われたのだろうか。 自分の心の中では,身構えていたが,何も起こらなかった。途中途中にある少年時代の話や,自然との対話が実に印象深い。 自然は人間を大きく包んでくれるが,傲慢な現代人はそれを切り刻んでいる,そんな人間たちもやっと気づき始めてきたようだ。もう遅いかもしれないが・・・。 気になるワードを羅列しみると,ハマゴウの実,お茶,餅つき,豆まき,たんぽぽ,雪,昔話,雲,春一番,ホタル,星,さくら,よもぎ。 本から湯気が出てるみたいに本当に温かい本である。 少し心が痛んでいるとき,どのページのどの作品でもいい,ガマの油売りではないが,読めばたちどころに快復すること間違いなしである。 |