今週のおすすめ本


ブック名 中年以後
著者 曽野綾子
発行元 光文社 価格 1575円
チャプタ @ただ人間だけがいる
A許しと受容の時
B桜の精の悪戯
C今日は,私
D大皿は入れたものをすぐ冷やす
E土の器を楽しむ
F親を背負う子
G読まれなかった日記
H固い顔もやわらげる
I親しい他人
他13編
キーワード 老化,人生の価値観,残したいこと,家庭,親子関係,人間,人脈
本の帯 <中年以後>だから人生はおもしろい!
気になるワード
・フレーズ
・中年というものは,もう大人として認められた魂の独立が可能になってから後の年月の方が長い人格を指す。だから,ことの責任は,遺伝的な病気以外は,すべて当人の責任なのだ。
・私は男性が色気を感じる女性というものを推測できないが,人間はいつもいつもベッドインしたい異性ばかり付き合っているわけではない。その時々で,料理の旨い人とか,身の上相談をしたい人とか・・・その人が黙って生きている姿が好きな人とか,さまざまな要素で惹かれるはずである。
・中年以後になって初めて我々は,人生のさまざまな姿のからくりを見破る知識を蓄え,それを判別する知力を得るのが普通である。だから本当の人生の価値観というものは,中年以後にしか完成しない。
・親に何も尽くさなかった人は,見ていてもぎすぎすした生活を送っているように見えることが多い。親と最後まできる限り付き合って来た人には,その点運命の自然な恩寵を感じることがある。やるべきことをやった人というのは,後半生がさわやかなのである。
・体力の衰えを嘆く人は多いし,それも当然なのだが,私は体力が充満している時には考えられない人生の見方というものも確かにあって,それがいい人を作るような気がする。
・世の中が算数通りだとしか思えない人,或いは算数通りにならないと怒る人は,写真の中でただ年を取るだけだろうし,算数の乱れを面白がれる人は,恐らく若いときの写真よりも,年を取ってからの方がおもしろい人物に写るのだと思う。
・余生の眼はしっかりしていて,はっきり欲しいものを選べる。中年以後は,誰でも少しは余生的な眼を持つべきだし,また持てるはずなのである。
・誰にもあるその人なりの最盛期に,「盛大」を上りつめた人も,いずれは程度の差こそあれ,中年以後のいつかには「撤収」と「収束」の方向に向かうことになる。実は,この時期をうまく過ごすのはかなりむずかしい仕事なのである。
・女房が先に死ぬかもしれないのに,炊事一つできない男などというのは,まさに未成熟な中年の典型ということになる。


かってに感想 曽野綾子の作品は「完本戒老録」を読んだだけである。作者の作品でもうひ とつ気になる最近話題の本がある。「いい人をやめれば楽になる」という本な のだが,自分がいい子ぶっているかどうかは別として,少しためらっている。  そうこうしているうちに,こんな題名の本にゆきあたった。
 夏の暑さのせいではないが,文庫本を読んでも,感想を書く気になかなかな らず,パソコンのハードディスクが壊れて,ホームページの更新材料の蓄積も しばらく怠けていた。久しぶりに買った単行本の感想ということになる。
 人間老いるに従い,健康,仕事,自分・家族の将来等,何事にも不安をいだ き始める,不安を抱く時期,ターニングポイントが中年ということになる。
 その中年について,いろいろな辛口の言葉が出てくる。少し列挙してみよう。
一本の老木,撤収,消える,いなくてもいい人,自分がいなくても誰も困らな い,体力の衰え,失う,いずれも企業人として社会的にそれなりの地位に位置 してきた男にとって,耐え難いフレーズの世界なのかもしれない。
 辛口であればあるほど,企業組織で凝り固まった固い頭には,刺激的でいい。
 企業では外向けには人材育成とか,人を大切にとか,言っているのだが,現 実は効率優先・コスト至上主義であり,個人優先の地域社会での生き方・考え 方とは,180度違うのである。
 中年以後は,組織の中で自分の先が見えてくる,いつまでも組織にしがみつ いているのではなく,一人の人間としてどう生きていくのか,そんな迷いが出 てきた時期にある人にはとてもいい書といえるのではないだろうか。
 一方,中年から老年への過程は,どうしてもしぼんでいくイメージを強くも がちであるが,それなりにいいものはあると,筆者は聖書の教えを引用しなが ら固い頭の私たちに問いかけている。それらは気になるフレーズにゆずること として。
 大切なことは,「金権主義」「算数通り」「外見」「健康オンリー」「権力 追求病」から一日も早く脱することのように私には思える。
・老いへもどる