今週のおすすめ本


ブック名 元気が出る患者学
著者 柳田邦男
発行元 新潮新書 価格 756円
チャプタ

@「患者学」事始め
A病気について「知る」には
Bくじけない「生き方」のために
C患者・家族が悩む問題
D求められる医療者の対応
E「患者のプロ」になるための読書術

キーワード 死生観、病、患者として、生き方、家族、医療者
本の帯(またはカバー裏)
とまどう患者と家族のために
医者と賢く付き合う必携ガイドブック

気になるワード
・フレーズ

・私は、<<病気を考えるとは、いかに生きるかを考え、人生を考えることだ>> と思うようになっている。
・本書のねらいは、単なる「医者のかかり方」のノウハウを説くことではない。 病気と賢くつき合いながら、真に豊かな人生を拓くための道案内をすることにある。
・人生は重大な病気を背負うと、否応なく生き方の変更を迫られる。そして病気を人生の中に どう位置づけ、死を前提にした生き方をどうするか、人生で一番大事なものは何かといった 問いを自分自身に向けて発したとき、どのような行動が解答になるのか。

・患者は自分の人生の最終章を書く段階になったら、この世に生きた証しをつかむための 何か、あるいは「思い残し」をなくする何かをやり遂げようとしていることを、医師に 語りかけるようにしたいものだ。
・人生とは、ある意味で応用問題を解く日々のことだ。闘病記を読むのは、応用問題を解く能力、 はじめて直面する困難な現実に対処する能力を耕すためなのだ。
・人並みに野心も欲もあった頃は、道端の小さな草花や木々の緑の変化にも、そんなに自分の 注意がいくということはありませんでした。いわゆるおざなりな見方だったのでしょう。 ところが、病後は、それらの1つ1つが私の目には生き生きと映り、光り輝いてみえるように なったのです。

・「生き方」を学ぶ7つの方法
@闘病記、エッセイに親しむ。
A患者会、市民団体に加わる。
Bボランティア活動をする。

C医療者と「いのち」の会話をする
D家族・友人と「生き方」を語り合う。
E病気のポジティブな側面に気づく。
F「生き方」の転換を考える。

・ロダンの「考える人」に倣うなら、「考える患者」になってほしいというのが、この本のねらいなのだ。 それゆえに病気に対する心の持ち方や生きようとする意思や生きがいの重要性について、 繰り返し述べた。

かってに感想
かつて「事実・真実」を見つめるするどい目にいつも感心させられながら、 筆者の作品を多く読んできた。
いつのまにか、そんなノンフィクションの世界から離れていたようだ。
久しぶりに書店で出会った筆者の作品である。

なぜ買ったか、半世紀・定年を前に、もういつ病を患ってもいい年になったからだ。
まあ病気になるなら、気持ちだけは元気でいたい、そんなとぼけたこと考えていた。
だから、目についたのである。

そもそも、50年過ぎたが大病を患ったことがないから、実感がないのである。
それにまだ住居が定まって10年だから、いわゆる行き付けの医者・病院もない。
あまり関係はないが、家人はいろいろなところへお連れしたが・・・。
だからと言って、病院も医者も苦手である。
そんな私だから、第1章の「患者学」事始めで、二人の女性ガン患者の凄まじい闘病生活、 手術経歴を語る話で気持ちが完全に萎縮し、頭をガツーんとやられてしまったのだ。

第二章では、苦手な診療10カ条を学んだ。簡単に書き出して見よう。
@自己紹介、A医師の氏名等確認、B尋ねたいことをメモ、
Cわからない点を聞く、D大事な点をメモ、E薬の確認、
F重大な説明は別途時間、誰かに同席、Gセカンドオピニオンを求める、 Hリビングウィル等を伝える、I医療の限界を知る。

さてさて、こんなことがいざとなった時の私にできるだろうか。
ただ自分が意識不明になった時は、あらかじめ妻とよく話しておく必要があるようだ。
元気な患者になるためには、今から胆に銘じておきたいものである。

第三章は病気になった時の「生き方」考えさせてくれる。
とは言うものの、元気で生きてる今でさえ「生き方」についてあまり真剣に考えたことはない。
だから、実際にその場にならないと生き方も考えないし、闘病記も読まないような気がする。
それは、精神科医のこんな言葉「他人の痛みは何年でも耐えられるが、自分の痛みは、1分 といえども耐え難い」や 筆者の「やはり人はいのちが危機に直面するような経験をしないと、本気で人生やいのち のことを考えないのだ」こんな言葉で十分わかる。

第四章は、患者、家族が悩む問題について書かれている。
父の病と死、母の病と死、家人の母の病でかなり学ばせてもらった。
ここに書かれている、キーワードは、告知、治療法の選択、がんの治療法をめぐって、延命治療 について、代替診療・民間療法について、病院かホスピスか在宅か、である。

第5・6章は、医療者の対応や読書術なので、さっと読み流した。
読み終えて、果たしていざという時、筆者の言うように「患者のプロ」なれるだろうか。
それは、この本のことをすっかり忘れた頃かもしれない。


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