今週のおすすめ本


ブック名 あきらめない人生
著者 瀬戸内寂聴
発行元 集英社文庫 価格 470円
チャプタ
@女の魅力
A愛とセックス
B花のいのち人のいのち
C寂聴微笑仏
D華やかな老い
E旅路はるか

キーワード ブラスイメージ、老い、性、好奇心、相手の立場、才能、チャレンジ
本の帯
生きるということは自分の中にある才能の可能性を引出し、それを育て大輪の花を 咲かせること。そして自分の才能の花が、自分以外の他人を喜ばせることが最高の 生き方だと思う。・・・と語る著者のはつらつ人生讃歌・・・美しく穏やかに生き延びる、 ヒントに満ちたエッセイ集。
気になるワード
・フレーズ

・なにを隠そう、私は晩年もっと美しく豊かに老いてゆきたいとある日、突然思ったからです。 というのは、つくづくと風呂場で自分の体型をつぶさに観察した結果、 ああ醜悪だと目を覆いたくなったのです。 ・・・いやだ!絶対この醜悪な体型は認められない! そう絶叫した途端、決然として、私はダイエットを発願しました。
・若い男性は、給料が入るとまず着るものを買い、その服を着て町を歩きながら、 ウィンドーに姿を映して見ると言います。これはもう全く女性の心理です。 彼らがどういうときに真に優しい男らしい態度で女をかばうのか、そんな姿を見せてもらいたいと、 秘かに思っております。

・仏教の教えの根本は、とらわれない心にあります。また偏らない心にあります。 とらわれず偏らず、自然体であることが、人間の真の自由を手に入れる一番の近道なのです。
・歳時記夏の部は、春よりずっと伝統行事の類が多いのに気づかされます。私たちの祖先は、 なんという細やかな心で自然や風土を愛し、生活をいとおしみ、様々な潤いのある行事を 行っていったかと、目を見張ってしまいます。
・花が散るため花を咲かせる以上に、人間が死ぬために生まれてくる運命のほうが苛酷なように 思います。

・神や仏を信じていたつもりでも、自分ひとりを愛する家族から引き裂いて死なせてしまう 運命というものに納得し難く、そういう意地悪をする神や仏に文句が言いたくなるのです。
・「・・・こんないい家族と別れてわたしひとりが死んでいくのが寂しくってたまらない。 この人たちともっと一緒にいたい。こんなことを思うのは罰当たりでしょうか」・・・私は、 勝ち気でしっかり者のその人が、こんな素直なことばで、生に執着するのを聞いて心が 温まりました。
・その人は学問と教育一筋に生きてこられ、酒もタバコものまないし、生涯独身を通され、反 原爆運動に身を挺された、まるで聖者のような人です。「何も悪いこともしない自分が どうしてこんな目に遭うのかなあ」

・私たち人間は生まれたときから、死という種子を体内に抱えている果実のようなものです。 いつも一緒にいるので、つい死について無関心になっているのではないでしょうか。
・梅棹忠夫氏が盲目になった時、「どうして自分がこんな目に遭わなければならないのかと 思って苦しみました」・・・この現実をあるがままに受け入れようと決意なさったとき、 生きる勇気が与えられたとおっしゃいました。
・プラスイメージで生きていると、いつでも陽気だしなんにでも好奇心が持てるし、 新しいことに挑戦できるし、そうすればそれに向かって活力が湧いてきて、 若さがますます盛り上がるような気がします。

かってに感想
楽しいエッセイ、肩の凝らないエッセイ、生きるヒントいっぱいのエッセイ。
いつものごとく、どこから読んでもいいのだ。
寂聴さんの本は3冊目である。

何百冊とある作品のほんの一部である。
過去読んだ「孤独を生ききる」というのが、いまだ印象深い。
その本を読んでから、幾久しい。
題名から、別に人生をあきらめているわけでもないのだが、書店で触手が動いた。

筆者は、50代で得度し、仏に仕える身から、寂庵を訪れる悩みを抱える人たちに 多くのアドバイスをしてきた。
ご本人自身も許されない恋の経験から、恋に悩む女性からのものが多いということは、 メディアからの情報からもよく知られている。
そんな筆者だから、「人間の生は性によって育ち、性によって終焉を遂げるのです。 人生から性を差し引いて、なんの生きがいがあろうかと思います」、実に意味深い 言葉であり、とても気になるフレーズだ。

ただ、読みながら、何かしら遠過ぎて、なぜ身近に感じられないのかと考えてみた。
それは、どうも己自身の未熟さから来る、「すぐラインを引いて、これ以上はわからない」としてしまうものだと理解できた。
つまり、わかりやすいものは受け入れられて、むつかしいとおっぽり出す性格からくるもののようだ。

だから、宮沢りえのふんどしの写真集の話や、「男だって性的に不能になってからも、精神的性欲は ますます強くなっているのです」なんていう性の話になると、とたんに目が輝き出すのだから。 今回の著書で生きるヒントを三つもらえたようだ。
ひとつは、生きている限りチャレンジすること。
二つ目は、老い、病、死は過去の行動の善し悪しに関わらず平等にやってくるということ。
そして、老いても、ダイエットによる自分なりの体型を保ちたいということ。

もう少しくわしく言うならば、まずは、チャレンジだが、だれしも秘められた才能を持っている。
だが、それを自分の引出しから、引き出せていないのだ、だから、いくつになってもいろいろ チャレンジしてそれを求め続けていたいということ。ただ、筆者の場合、その才能を 人を喜ばせることに使いたいということ、「自分が楽しみたい」という私と、ここが多いに違うのだが。

二つ目は、「華やかな老い」のチャプタにある6つの話を読みながら、 いくら素晴らしい業績を残した人でも、己に課せられた老いと死の病の苦しみから、「自分が どうしてこんな目に遭うのか」という言葉を漏らすことである。
ちまちま、ちょこちょこ、世や社会にも企業にも地域にもなんの貢献もせずしても、死とか、 老いとか、病とかは平等なのだというなんともいえぬ安心感がもらえたのだ。

三つ目は、ほんとにつまらないことなのかもしれないが、寂聴さんも極めて俗世間の流行 ものダイエットをやっていたことである。
別に男だから関係ないと言われそうだが、どうも今の年に思うことは、下腹部のせせり出た 姿だけは願い下げたいという自分がいるのだ。

まあ、もともと血圧が高いから、薬を飲めと医者に言われた時から、始めてみたら、結構、 散歩道から花鳥風月のいろいろな贈り物をもらえ、さらにせせりだしていたお腹も へこみ、血圧もそれなりに安定しているのだ。

寂聴さんの「私が減量した理由」を読みながら、妙に笑えてしまったのだ。



・メニューへもどる