今週のおすすめ本


ブック名 ありすぎる性欲、なさすぎる性欲
著者 ウィリー・バジーニ
川本英明訳
発行元 草思社 価格 1575円
チャプタ
@性欲の歴史
A性欲の化学
B反応してしまう理由
C性欲の「共犯者」
D性欲の「敵対者」
E心の中の敵
Fブレーキの壊れた性欲
G性欲の欠如
H二人のための「錬金術」
I性欲につける薬
キーワード カウンセラー、異常、正常、生きること、性欲
本の帯
性科学者が解き明かす、謎に満ちた欲望の正体!
「正しい性欲」のあり方
気になるワード
・フレーズ

・性欲は色とりどりの錠剤や無味乾燥な数式で説明がつくメカニズムではありません。 性欲というのは詩的なものであり、空気のように、また夢の中の出来事のように、 まるでつかみどころのないものなのです。
・たとえそのために苦しんだり、倒錯にはまりこんだり嫌悪感にさいなまれたりすることになっても、 「性欲は人生そのもの」なのです。性欲のない人生は、 まるで水が枯れてしまった川床のようなものです。
・心臓疾患をわずらうと、「命がけのセックス」になりはしないかと不安を抱くため、間接的に 性欲の減退を招くことになります。血圧降下剤などを処方することがマイナス効果を生むことも あります。

・この時代を1つのキーワードで語るとすれば、「自己中心主義」という言葉がぴったりかも しれません。私たちの性欲は、他人とわかち合い楽しみ合うためではなく、ナルシスティック に自分の殻に閉じこもるための道具になってしまっているのです。
・一度消してしまった性欲が、どうやって再び姿をあらわすのかを知ることは難しいのです。 性欲を引き出すためのいわば「共犯者」というべきものは、人それぞれ違います。
・性的幻想を抱くことは、なんら恥ずべき行為ではありません。むしろ、それは性行為を男女の 体操にしないためにも、自我を解き放ち自由な心の旅に赴くためにも、重要なことなのです。

・性欲は無限の精神的エネルギーとも言えます。性欲を社会的に不謹慎なものと考えたり、心理的に 受け入れがたいものと考えて、そのようなエネルギーにフタをしてしまうような人は結局、 性欲の代わりにそのフタに性的な価値を見出そうとするのです。
・自分で自分を抑圧しすぎて性欲がなくなってしまう人がいます。
・性欲が消え去ると、それと同様に食べる悦びや友人と出会ったりする悦びも失われ、さらには 仕事などで朝、家を出て行くことさえ苦痛になるのです。

かってに感想
イタリアのセックスカウンセラーが診てきた患者たちの事例をもとに、 「正しい性欲」のあり方について、書かれたものなのだ。
私自身、異性を意識し始めて、初体験をしてから以降、性に関する風俗と申しましょうか、 人の意識も、オープン度合いも、急激に変わってきた。
特に、インターネットなるものが登場してさらに、過激な映像が簡単に見られるようになってから、 性に関するものはなんでもありの世界になってきたようだ。

そんな中で「正しい性欲」と言われても、私のような性欲に対して下り坂と言いましょうか、 散ってしまったような年齢のものにとって、「性欲」はいまだ興味深いキーワードなのだ。
特に老いの性欲に関しては、まだまだ知られていない部分と、60歳を過ぎたおじさんが 女高生と「援助交際」をしたなんてのがニュースに出て、みんな驚くぐらいだから、老いの性は はなはだいかがわしいもののように思われている。

女は死んでもとか、灰になっても女なんて言われるが、それは男だって同じなのだ。
「正しい」という時、その基準をどこにおいて見るのかが、実にむつかしい世の中になってしまった。
要は、最愛の伴侶・親しい異性とともに性に関して、楽しめる範囲だということのようである。

ただ、一応性別はあるとは言え、同性愛、??フェチ、身体は女でこころは男、身体は男でこころは女、 なんてのもあり、さらに複雑多岐にオープンになってきているのだ。
はじめにもあるように、「相手の立場に立って考えることができるかどうか」そして「ほどよいバランス」 ということなのだが、この世界も行きつくところは「少欲知足」というところか。
そして、若い時は若いなりに、年をとれば年を取ったなりの工夫が必要ということになる。

まあ、とにかくいろいろなカウンセリング事例が記載されているから、性生活について気になっている方も、 気になってない方も興味深く読んで見たらいいと思う。
決して嫌らしいものではないので、そのてを期待している方には、お勧めできない。
この本を読むとまずは、性生活でまじめに悩んでいる方がたくさんいることを知るだろう。

そして、日本人は、こう言った相談をオープンに他人に話すこと自体ないから、驚いてしまうかもし れない。
さらに意外に思うことは、「異常な欲望は、以前に体験した苦しみを乗り越えるために 生まれたもの」だそうである。

「今の若いものの性の乱れ、結婚についての考え方に目くじらをたててる方」その前に、結婚後の性生活について まじめに書かれたこの本を読めば、その乱れもおのずとわかってくると思われる。
私自身、「物欲」「金銭欲」「出世欲」「名誉欲」はほとんどなくなってしまったのだが、 いまだに、なぜかこの「性欲」がなくなることだけが、生きてることへの強迫観念が働くのだ。

筆者が「結び」で性欲について4つの注意点(@性欲についての知識を持つこと A性欲の知識を交換することB性欲に耳をかたむけることC性欲を持続させること)、をあげている。

これは守れなくても、できなくても、訳者の言う「人間に生の躍動を与えてくれるこの性欲の 火種を消すことなく大切に育てることこそ、豊かな人生を送る条件」と言われると、 いまだ火種を消せぬ自分からして、その通りだと言わざるを得ないのである。




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