今週のおすすめ本


ブック名 引退SENGEN
(副題)嫌われ者の美学
著者 上岡龍太郎
弟子吉治郎
発行元 新潮文庫 価格 1470円
チャプタ 序幕:”嫌われ者”の美学
@”落ちこぼれ”でなく”浮きこぼれ”の人生
A迷ったら”楽”な方を選ぶ
B今が上り坂,だから苦しい
C難しそうなことには楽しみも多い
終幕:”最後”だけは頑張って走る
キーワード 人生論、親の言葉、逆説
本の帯 最後にこれだけは言っておきたい!
醜く好かれるよりは美しく嫌われたい。落ちこぼれではない浮きこぼれただけだ。人生は今が上り坂,だから苦しい。
上岡龍太郎,最初にして最後の"辛口"人生論
気になるワード
・フレーズ
・何より興味を引かれたのは「他人の人生」には大量の「そんなアホな」があふれていたことである。偉人も凡人も含めて他人の人生にはどこか解明しきれない謎があるものだと感じていた。
・追い風は全く気がつかないが向かい風は敏感に感じる。世間から見たら追い風に吹かれているに過ぎないのだが、成功は自分の力だと思っている人が多い。
・いわゆる団塊の世代の親は、「迷惑をかけるな」という言葉が大好きであるという。これは爆発的に人口が増えて激しい競争時代を過ごしてきた反動で、他人を押しのけることを反省しているからだと解釈できる。でもそれは違う。実際の観察では、最も迷惑をかけているのがこの世代。口では迷惑をかけるなといいながら、身体はかけることになりきってしまっている。
・上岡は「だからあんな子孝行の親はないですね。自分が苦労して苦労してお金を貯めて、子どもには楽をさせて。死ぬときも別にアルツハイマーになるわけやない。長生きして嫌がられるわけじゃない。いいときにころっと死んでしまったが、借金も残っていなかった。あんなに子孝行の親はいない。見事な死に方でした」
・人生の長さは終わってみないと分からない。「最後ぐらいは走りましょうね」と言われても、どこが最後か分からない。最後の最後とは臨終の床の上か?分かっていることがある。人間はどうしても死ぬということだ。
・個人の知恵が還暦ではないだろうか。十二支を5回周ってまたスタートすることにしようという提案である。隠居ではない。再起動。リスタートである。老いを怖がるな。足ぐらい痙攣してもまた走るのだ。走らないから悔いが残る。老いを受け入れるから悔いが残る。
かってに感想 副題の「嫌われ者の美学」という言葉や、本の帯にある「醜く好かれるよりは美しく嫌われたい」といった言葉から、私たち団塊世代の人間は嫌悪感を覚えるだろう。
また、「苦より楽を選ぶ」というフレーズから、地道にひたすらコツコツと家族のために働いてきた団塊世代は、さらに本を手にとることさえやめるかもしれない。
目次の各チャプタのフレーズ紹介の中には、「若いときには苦労するな」「難しくて分からないから面白い」「人に迷惑をかけるべし」といったこの人何を考えとんやろかと思いたくなるものがある。
一方で、「勉強したいときが就学年齢」「悩んでいるのではなく迷っているだけ」「偶然の出会いは一生の出会い」「やったことは後悔しない。やらないことを後悔する」といった噛み締めればいい味の出るフレーズもあるのだ。
ではなぜ私がこの本を求めたかというと、引退SENGENという題名だけで買ってみたのである。かねてから、この主人公がテレビで引退宣言をし、本当なのかと思いながら、偶然にも書店でこの本を見たからなのだ。
この本自体は、弟子の人が日頃から上岡氏が言っていたことをまとめたものである。途中( )で注書きの弟子による説明がたくさんある。このあたりはほとんど漫談の世界である。お笑い芸、読むというよりかけあい漫才を聞いているという感じで、その笑いはその時大きな声で笑っているが、頭の中にはほとんど残らない。
読んでいて繰り返し出てくる言葉、それは上岡氏の父の言葉・物事の判断基準「苦労をするな」「楽な方を選べ」だけが、妙に頭の中に残った。
われわれ凡人は悩んでいるのではない。迷っているのである。だから、その判断基準さえあればいいのだ。というへ理屈論はとても面白い。
悩んでいる人からすれば馬鹿にするなとなるかもしれないが、何に価値をおくか、それがいくつになっても見つからないから余計に悩んでいるのではと私は思うのだが、あなたはいかがだろうか。
そんなことを考えているうちに一生を終わってしまうのだろう。
いずれにしても今年3月20日上岡氏は引退し、2年間ほどゴルフ三昧そして、日本往還マラソンと30キロごとの市町村で地方を見学して、2003年の11月大坂市長選挙に出馬するかもしれないのである。本当かどうかそのころには忘れてしまってだれも確かめる人はいないかも知れないが・・・。4月1日のエイプリルフールにやってくれれば、すぐ嘘だと分かるのだが。
最近は嘘つくやつばかりだから、しゃれで本当にやって欲しい者だと逆に思ってしまうのである。
・定年へもどる