今週のおすすめ本


ブック名 依願退職
(副題)愉しい自立のすすめ
著者 高任和夫
発行元 講談社文庫 価格 490円
チャプタ
@辞表提出−ある商社マンの人生
A「職業多段階時代」を生きる男たち
B会社を辞めるための準備運動
C家族との平和条約
D会社を辞めることを恐れるな
E起業家から学ぶ


キーワード 肩書き、婦唱夫随、自立、サロン、地域社会、助走運転、転職
本の帯
会社を辞めて得する生き方、ノウハウが満載


気になるワード
・フレーズ

・どうも転機というものは、多くの場合、いまやっている仕事の延長線上にあるようだ。
・「日本の会社は、システムマンの評価は低いんですよ。儲けは出さないくせに、金ばかり 食う、と。外資系はちがう。システムが心臓だということを、よく知っている」
・「内部官僚」と呼ばれるエリートは、会社にあってのものであり、ほかの企業風土の中で通用 するものではない。ただ困ったことに、大会社ほど内部官僚が幅を利かしがちなのだ。

・「酒、煙草、おしゃべりは口の病」
・団塊の世代の場合は、経済的により深刻だ。住宅の取得コストがちがうし、年金だって当てに ならない。さらに過当競争を生きぬいてきただけに、還暦世代よりも仕事いちずだ。
・群れるということは、ヒトの根源的な欲求である。とすれば不況のときこそ会社から 離れた新しいサロンを作らねばならない。

・女たちはネットワーク作りに年季がはいっている。まず子供の学校のPTA仲間というのがある。 それから地域の仲間というのもある。自治会なんかで親しくなるのだ。それと趣味の集まり、 ネットワークは次々に広がっていく。まるで蜘蛛の巣みたいだ。
・やはりなにかを作って、そしてそれが目に見えて、しかもなにがしかのお金をいただけるとい うのは、金額の多寡にかかわらず楽しいものなのである。
・人はどこに仕事場を得て仕事をしようと、自分を100パーセント活かせるところもあれば、 まったく活かせないところもない。すっかり安心なところもなければ、その逆もない。

・男たちは、まだまだ会社に囚われすぎなのだろう。社会にネットワークを広げ、50歳にして 起業する芸当はなかなかではない。
・半隠居して、きたるべき隠居に備えるのがいいのではないか。そのためには、省事に徹する。 また、人事という業病を避け、そしてまた「ひねもすのたり病」を避けるため、ラインの 管理職は若い人に譲り、自分の得意技をふるえる仕事に専念する。そして、転職や自営の 可能性を探る。

・足るを知るということ。際限のない欲望追求をやめる。ものに執着しない。それから、楽に 生きるということ。義務、役割から離れられれば、楽に生きられる。また、老いを楽しむこと、 いまの時代もてはやされているように、若いというのが、いいのではない。
・事業を起こすことを通じて、リスクをとる生き方を教えるのです。
・みながみないい大学やいい会社に入るのを目指す。そして、サラリーマンになったら、 リスクを避けようとする。人は自立心を持たず、社会は活気を失う。


かってに感想
「依願退職」の表題から連想していたのと少し中身は違っていた。
副題の「愉しい自立のすすめ」と、依願退職とリストラ転職と起業家の話である。
最初のチャプタは、筆者本人が二足のワラジをはくようになったいきさつから、 やがて、小説家へと転身するまでの話。

第二のチャプタは、自主廃業した山一証券でやむなくリストラされた人たちの、 悩みに悩んでの転職するまでの話。
第三は、辞めるための準備段階として「サロン」作りの提案である。

第四は、自立にあたって一番大切なこと、それは家族、特に妻との話し合いである。
第五は、会社を辞めることはたいしたことではないという話である。
この中には、人事は業病に始まり、ひねもすのたり病、人徳欠乏症、肩書きってなんだ、 同窓会の序列など、サラリーマン独特の病気を解説したものである。
さらに、現役時代とは違う、退職後に起こるさまざま変化、生活のリズム、 金銭感覚、情熱、年賀状、読書・・・・・・・・などについて書かれている。

そして最終章は、会社勤めから実際に起業した人たちの話なのだ。
いつもながら、ノウハウ本だから、いいとこどりでいいのである。

第二の人生に関する本を読んでいると、いつも出てくる話題は三つある。
「趣味」「妻」「自立」であ。当然、この書でもふれられている。
身がつまされたのは、山一証券マンが突然のリストラにあい、転職するまでの話であるが、 読みながら、転職というのは一般のサラリーマンでは、こういったいきさつがないとむつかしい ということだ。

ただ、それは、30代以上の人間が思うことであって、筆者がいう職業多段階時代の今日においては、 転職しながらステップアップし、自分に合った本当の職業を求める世代がすでにできていると いうことなのだ。
この世代は、会社に対する未練とか帰属意識は薄く、きっぱりと割り切れる世代のようだ。

たぶん私のように何もなくそのまま定年を迎える輩には、次の話がとても参考になりそうである。
一つは、辞めるための準備運動として、「サロンを作る」「地域社会にとけこむ」 「転職後の友人を作る」「サロン名人になるためには」ということ。
作る、とけこむ、ということはいずれも主語は自分からである。

「サロン名人になるためには」の中には、4つの条件があるから、書き出してみよう。
好奇心がきわめて旺盛、棟梁の資質がある、骨おしみしない、女性の友だちがいる、 だそうである、みなさんはどうだろうか。

もう一つは、企業を離れた時、一番気になる存在−妻−のこと。
書かれているキーワードは、「妻の言い分」「妻という名の他人」「自立への道」。
やはり忘れてならないことは、専業主婦であれば長年の生活の中で、すでに妻の世界が 家庭の中にはできている。居場所ひとつとってもそうであることを、まずよく認識することなのだ。
さらに、妻は地域社会とか友達の輪を亭主抜きで作っていることも忘れてはならないことなのだ。

さてさて、筆者は愉しいというが、準備段階を無視して突入するようなことになると、厳しい反発を 招くことだけは、明らかなようである。ご健闘を祈りたい。



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