今週のおすすめ本


ブック名 「閑」のある生き方

著者 中野孝次
発行元 新潮社 価格 1575円
チャプタ
@老年の準備は40代から始めよ
A自分1個の意識を徐々に高めてゆくべきこと
Bマインドの暮しからハートの暮しへ
C生活を単純化すべきこと
D少しずつ軸足を社会から私の方へ移してゆくこと
Eお金より「閑」を。人生にはする事よりしない事の方がいい場合がある
F実践上の忠告あれこれ
Gエピクテートスの教え
H万事に換えずしては、1の大事に成るべからず
I祝福さるべきは、若者ではなくて、よく生きた老人である
J生きるのは「今ココニ」しかないと心得ること
K自分を信じろ。周りに流されるな。力むことはない(レジー・ジャックソン)
L社会という車を乗り捨てる
M自足した定年後の人生、2,3の例
N自分の場合
O高雅・閑行、自在の身

キーワード 内なる自分、単純化、ひとつの大事、ハート、しない事、今、自分でできる事
本の帯(またはカバー裏)
「忙」の時代だからこそ「閑」を
本当の自分生ききる思想がここにある
気になるワード
・フレーズ

・昔から人が己れに会うとは、全体としての自分に会うことをさして言う言葉だった。・・・ 多忙の中にあってはそういう心の世界には入れない。一人きりになって、他に気を紛らわせる 何もなく、「閑」という状態に身を置くときだけ、人は全体として自分を取り戻す。
・物事の判断、得失のすばやい計算、ふるまい方や物の言いようの選択、情報収集と選り分け、 社会の動きについての認識、そういうことを行うのを、加島はマインドの働きという。
・自然情報とは人間がひとり自然の中にあってその声を聴くことや、自分の内なる声、 ハートの声に耳を傾けることで、その声に従うことが自由ということなのだ。

・物というものは、あれば必ずそれに心をとられるものだ。落して壊しはしないか、 こぼして汚さないか、傷つけないか、盗まれないか、その他その維持や保存に絶えず心労する。
・「朝夕なくて叶わざらん物こそあらめ、その外は、何も持たでぞあらまほしき」(徒然草)
・単純化とは物に心をとらわれないで心を無の世界に遊ばせることだ。

・人工刺激物と46時中かかわっていては、人は到底心の声、自然の声を聴くことができないと、 君は知るべきだ。それなしでは心が空虚で空虚な自分と向い合うのがこわさにすぐまたそれに 戻るのだろうけれども、そんなことをしていては人は一生涯自分というものを受け入れることが ないだろう。
・力のうちにあるものとは、自分の考え、行動、意欲、拒否、・・・力のうちにないものは何かと いえば、自分の身体、所有物、評判、社会での地位など・・・。
・自由であることを欲する者は、他人の権能下にあるものを得ようとしたり、避けようとしたり してはならぬ。さもないとその人はいやおうなく他人の奴隷になる。

・自分の力のままにできることにおいて最善をつくせ。自分の力の下にないものについては 運命にまかせて、それを受け入れよ、ということになる。
・これが何より第一だというものをしっかり思い定めよ。そしてひとたびそうと決めたら、 そのほかのことは全部捨てて、その一事に励むがいい。
・「第一の事を案じ定めてその外は思ひ捨てて一事を励むべし」(徒然草)

・年齢よりも若くありたいというような欲が少しでもあると、意識と身体のあいだにズレ が生じ悲惨なことになる。
・問題は衰えること自体になく、衰えたら衰えたなりにそれを認め、それを受容し、 それにふさわしい生活をするかどうかなのだ。
・老子は「道(タオ)」といい、セネカは「自然」といい、趙州や大梅は「仏」といい、 エピクトーテスは「神」といい、名付け方は人それぞれちがうが、永遠なるいのち を指すことでは同じだ。

・現代人は多忙のほうがよく生きているという錯覚にとらわれているのだ。すなわち よく生きていることになる。
・自分を信じなきゃダメだ。人(批評家)にこう言われちゃああ直し、 ああ言われちゃこう直しするようじゃ、自分のものは絶対にできない。まわりの声なんか 気にしないで、自分を信じて、牛のようにじっくり押していけばいいんだ。
・自分の自由意志の支配下にないものについてくよくよ悩むくらいばかげたことはない。

・とにかく心を、現世での欲にみちた営みから離して、自然の理に生きるようにすることを 言うのだと僕は解している。諸縁を放下して、心の世界に生きよ、ということだ。 老年とはそういう境地に生きる時であってこそ、本当に安らかに、静かなよろこびに満ちた ものになる。希望を持て、ということだよ。

かってに感想
「閑」この一字を見て、じっくり読みたいと思い買った。
40代の年まで、いつも「忙」で生きたきた、いまだに時間に対する追われるような気持ち から余計に読みたくて、うずうずしたのだ。
著者の本は、「風の良寛」「老年の愉しみ」「自分を生かす”気”の思想」を読んできた。
あがかない質素な老いの生き方を教えられる。

この本の中には、筆者がこれだと思う、 「老いの生き方」が書かれたいろいろな本からの引用がある。
それは、良寛の詩集であったり、吉田兼好の「徒然草」、加島祥造訳の老子の詩句、
セネカの「人生の短さについて」、尾崎一雄の「まぼろしの記・虫も樹も」、 そしてローマ時代のエピクテートスの話などであったりする。

話の展開は、40代を迎えた「甥っ子」に、老いに向ってどう生きていくべきか 彼を諭すように進んでいく。
物の時代、消費する時代、金本位の時代、経済成長率のあるのが当たり前の時代、自己中心主義。 いい大学、いい企業、出世、名誉を重んずる時代にどっぷりと浸かった、いまその中心にある 「甥っ子」世代。
筆者が言うこと、いずれを実行するにも、大きな自己変革を要する事なのだ。

55歳を過ぎ、定年も近い我ら団塊世代でさえ、我らには関係ない事と思っている「フシ」がある。
それは「僕は現役で勤めている人達に会うとつい、今のうちから定年後の生活に入る心構えを 作っておいたほうがいいよと・・・、もっとも大抵の人はなんでそんなことをいわれたか わからぬふうで、『はあ』とけげんそうな顔をするだけだったが」
こんな本文のフレーズで十分わかるのだ。

まずは、老後の迎え方を二つに分類し、ひとつはやめたとたんがっくりの悲しい末路、 もう一方は老年を自由の時としたものになるというわけだ。
悲しい末路にならないためにも、仲間と飲む習慣を少なくして、家族と一緒に過ごしたり、 自分の時間を作ることを進めている。
次に、「マインド」主体から「ハート」主体への切り替え、 これには加島祥造の文を引用し、自然情報に耳を傾けよである。

さらに続けよう、生活を単純化し、物を捨て、物に執着するな。
老子の言葉を引用し、自分の外に目を向けるのではなく、内に目を向けよ。
人生にはする事よりしないことも大切だと説く。

7章では実践上での忠告まである。
その中には、腰痛にいい平床寝台を進め、ベッドで寝るなと言い、
テレビ、ラジオ、パソコン、ケータイなどへの依存度を減らせと言い、
仕事を自分の時間まで持ち込むなと言い、
自分でからだを使ってすることを覚えよと言い、
カードかローンとかの誘惑を疑えというわけである。

いかがだろう、物質文明の恩恵に浴し過ぎている現代人にとっては、実に耳の痛い 話なのである。
なんでそんなことまでとお思いの方に、8・9章で西暦紀元の初めのころローマ で活躍したエピクテートスの言葉を引用し、人生哲学とせよというわけである。
特に、自分のほんとうにやりたい事をしぼり、しぼりこんだら他のものは捨て、 やりたい事を一生かけてしようと思う事を進めている。
我ら団塊世代も変な好奇心が多すぎて、いろいろやってみたい気持ちがですぎ、 結局あれもこれもとやり過ぎているか、 仕事・自己組織中毒で仕事以外何もしないでいるか、どちらかと言えば後者ではなかろうか。

10章では老人を誉め、11章では「今ココに」を心得よ、
12章では、若い頃、筆者が励まされた尾崎一雄の言葉と、 ヤンキースの松井にアドバイスした大リーグの往年の名プレイヤー−レジー・ ジャックソンの言葉を、13章では一人家族から離れて田舎暮らしをする畏敬の友の 生き方を紹介し、14章では自足したセカンドライフを送る人たちを紹介している。
15章では、単純・簡素化された筆者自身の生活ぶりと楽しみが書かれている。

それは、「書」「碁」「酒」「犬」「読書」である。

さてわれの楽しみになるか、
「書」、書く気はないし、碁もやりたいと思わない、
さらに酒に至っては毎日晩酌で3合ということだから、
我は平生、付き合い程度で、それも一人で飲むのは好きではないから毎日晩酌はしないだろう。
「犬」は今のところ飼う気はない、最後の「読書」は好きだが、天職になるほどの ものではないし、「流行の小説やハウツーものぐらいしか読まない人は・・・ 老年になって実用上の必要がなくなると、ぱたっと本を読まなくなる」なんて書いてある からこれも続くかどうか怪しい。

いずれも、我が40代後半からやり始めたセカンドライフのために チャレンジしてることとは相当かけ離れているが・・・。
私のセカンドライフの考え方は、室内で生活のベースとなる自分ひとりでできるもの。
野外で自分ひとりでできるものと野外で友とできるもの。
家人と室内外で一緒にできるものを60歳までに作ることなのだ。
今のところ、やってることは、だいたい内なる心から、止めたいなんて言ってこないので、 いい方向なのではなかろうか。

老いの生き方、大いに気になることなので、「読み感」というより、 本の要旨をできるだけ沢山書いた。
これからの生き方に大いに参考になる事ばかりだ。
自分のぺースで少しずつ、15章の「自分の場合」を除いて、実践していきたいと思う。


・メニューへもどる