今週のおすすめ本 |
ブック名 |
悩み多きペニスの生涯と仕事 |
著者 |
ボー・コールサート (訳)江間那智雄 |
発行元 | 草思社 | 価格 | 1575円 |
チャプタ |
@小さな少年 Aペニス B玄関ドアのオルガスムス Cファロスの外套 D愛の滴 E陰嚢 F前立腺炎 Gペニスの大きさ Hコンドーム I折れた絵筆 J曲がったペニス K赤い旗 Lマスターベーション M断種 N前立腺ガン O男性美 P精液と環境 Q老いる |
キーワード | 男の性の標準的なこと,男のありかた |
本の帯 | 少年期から老年期まで,よく,その務めを果たすために,知っておきたい「男の性」の基礎知識 |
気になるワード ・フレーズ |
・性的障害やそれによって引き起こされる人間関係のさまざまな問題について,アドバイスを求められてきた。・・・このような性をめぐる感情の諸相をおざなりにしておくわけにはいかない。なぜなら,ときには尊敬の対象となり,ときには軽蔑の対象となる男性の性器官が,その任務をよく果たすかそうでないかを決めるのは,それらの感情にほかならないからである。 ・彼の妻と同権のパートナーとしての男性。あるいは相手の言葉に耳を傾け,なんにでも注意深く目を配り愛撫の時間を十分にとる恋人としての男性。自分の血を引く子孫のことを親身に考える父親としての男性。そうした男性の特質を肯定的にとらえ直したいのである。そして,常に奪うことで自分の弱さや不安を権力という鎧の下に隠そうとする男性ではなく,あたえることのできる存在として,男性をとらえようとしたのだ。 ・ペニスというものは,そのあるがままの形と大きさで受け入れなければならない。形や大きさは,人間の人格となんの関係もない。 ・中高年の男性には,勃起の努力を放棄してはいけないと,切に忠告しておきたいね。まったく勃起なしでいたり,ごくたまに勃起するのがせいぜいというような程度でいると,ペニスの海綿体は早くに萎縮してしまい,最後には弾力も失ってくる。 ・皮膚に手で触れ,さすり,震わせるなどということはなんとすばらしいことだろう。すべては自分自身の身体を認識し,関心を払うことにつながっていく。さらにすばらしいことは,それによって,これまでよりもっと繊細に他人と接することができるようになることだ。 ・病気や死と対決することにならないうちは,正常で健康な生活や仕事のことだけしか考えられない。出世したい,学びたい,恋愛をし,家庭を築き,生活をさらに豊にし,子どもをつくり,教育し,権力と権威を手に入れたい。そういったようなことばかりに気をとられている。 ・パートナー同士が,同権の関係のなかでそれぞれの望みをとげながら生を満喫していけたら,これほど理想的なことはあるまい。しかし,現実には,このような微妙な進化を実現していくのはかなりむずかしいだろう。 ・若い女性は自分の美をできるだけ長く保ちたいと願うが,老年が訪れれば,彼女の最強の武器も鈍くなる。男性の人生のカーブはしばしば女性と逆を描く。青年期には,ときとしてひどく厳格な姿勢を示したり,なにかに目がくらんだような態度をとったりする。こういう場合,男性はほとんど自分自身でさえなくなり,自分の人格と虚像とを取り替えている。 ・年齢を重ね,社会や人間関係において願望がかなうようになると,自分のエネルギーをうまくコントロールできるようになり,自分自身のあるべき場所に戻ってくる。落ち着きや温かさを発散するようになり,女性からは,そしてうら若い女性からも,青年の頃よりははるかに美しく,魅力的だと思われるようになる。 |
かってに感想 |
男社会が大きくくずれ,転換すべき方向性が見つけられない男たち,せめて男の性の部分で威厳を保とうと「不能」を極端に恐れ,あがいている男の姿がある。 「バイアグラ」が影のヒット商品として売れているのがよくわかる。エレクトしなくなったら,男性としての価値はなくなるのではと強迫観念に怯える男の弱さがある。 男優位の社会で地位,金,権力,所有,名声と欲望のままに得ていた男たちは,それらを女性たちに奪われつつある。 奪われた男たち,はみだされた男たちは,脱力感のあまり生きる場をなくしたように見える。 そんな男たちに「男の性」の基礎知識をあたえてくれ,いい男とはなんぞやとささやかなアドバイスをしてくれる。 悩み多き下半身,もっとも50年以上生きた私にとっては,多き悩みの80%ぐらいはすでに経験済のことなのだが。 断種,前立腺ガン,男性美,老いるの各チャプタは,じっくり読ませてもらった。 特に,自信を喪失しつつある男性の状態を受けて,「男性美」の中にある興味深いフレーズがある。社会的地位,権力,金を獲得しつつある女性たちに対して,「社会的経済的な威信を追い求めることに埋没している今日の男性たちとまったくおなじ罠にね」 という,男性の過去の誤りを,また女性も「罠」にはまりつつあるいう警告である。 それにしても,みんな言わないけどいろいろ悩みを持っているんだな・・・と思うことしきりである。 未経験で初めて知るワード等がある,ペニスが折れること(陰茎折症というらしい),血圧降下剤・睡眠剤・精神安定剤が勃起力を弱める,ペニスの義足,ペニスが消えてなくなってしまうパニック−コロ・シンドローム,男の愛液,ペニスは使用しなければ弾力性がなくなるということ,曲がったペニス。 もっとも日本人は外国人のように性に関して言えば後進国なので,決してオープンにとはいかないから,みんなどんな悩みを持っているかわかりませんということである。 たぶんこの本は,影のベストセラーになること間違いなしと思うのだがどうだろう。 |