今週のおすすめ本


ブック名 人間通と世間通
(副題)”古典と英知”は今も輝く
著者 谷沢永一
発行元 文春文庫 価格 519円
チャプタ @今,なぜ古典なのか
A世間通になるために
B人間通になるために
キーワード 読書,知恵
本の帯 読書とは,人の世に生きてゆくための,知恵を蓄える準備行動である,−そう考える人へ,この一冊を贈りたい。
気になるワード
・フレーズ
・現代は書物を読むことに大きなウェートを置いているタイプは、結果としてどうも傍目からは嫌味ったらしい。付き合いにくい人間と見られるようである。
・人間の値打ちを決める最終的な条件は知恵であると、信じている。・・・知恵とは何かそれは問題に直面して、間違った判断をしないことである。判断力とは、問題を解決できる方策を見出す思考である。
・一にも二にも論語の真髄は、自分自身を反省するための鏡なのだ。外なる世間の群像を見下ろすための展望台ではない。
・まず、最初は自分の内心、それを見届ける勇気がなければ、またその眼光に磨きをかけなければ他人の内心など分かるわけがない。
・嫉妬心を超越した自己反省こそ大切
・ある種の適性とある種の不適応性という配線が複雑にこんがらってできているのが、一人の人間・人格ではないだろうか。ひじょうに能力を発揮したと言われる人は、潜在的にその方面の仕事に向いた適性に恵まれていたのであり・・・その次に大切なのは、その適性をうまく発揮できる場所や条件に、自分の力によってか、第三者によってか・・・とにかくそういう場に自分が置かれたということである。
・「信」とは信用、自分自身が他者からどう評価され、どう評価されるか、ということである。「論語」は、全巻を通じて人間の奥底の内心というものをけっして問題にしない。すべて他者がどう判断するか、という問題であり、これは人間性に対する恐るべき洞察だと思う。
・人間修業とは、人間像に自分が一歩でも近づくために努力し、勉強するしかないのである。そして、読書はそのためのほんの一部分の手段にすぎない。・・・たえざる自己反省力と世の中を見る目の二つが必要となり、その力を養うことがまた読書の根幹の目的である。
かってに感想 読書,あらためてその目的を聞かれると「うっ」と考え込んでしまう。
生きる上で,仕事をする上で,何かのヒントを見つけられないかと本屋を探索するのが,好きになったのはごく最近だ。
読む本も年を重ねるごとに変化する。40代までは,仕事に関すること,世相に関することがほとんどであった。
最近は,もっぱら老いと病,生き方,趣味とかに移っている。
この本は,ずばり本を読んで,それも古典を読んで,生き方とか知恵蓄積術を得たい人にと明記されているのだ。
つまり,「何かを読むのに貴重な手間をかけた以上は,必ず効果をとらねばという欲深い人のために」と書かれている。
誠に親切なまえがきであるとともに,辛辣なフレーズでもある。改めて自分の読書の目的にそうかと納得させられたものだ。
この本には,知恵とか生き方の参考になる本が11冊紹介されているが,私はいずれも読んだことはない。
それぞれ,そのエキスを紹介すると,上手な生き方,人情と世間,社会のメカニズム,説得の技術,人間の評価基準,大義名分・実力・誠実,人間の仮面を剥ぐ,セックスの到達点にあるもの,人間性の真実,男の性の記録である。
人間の本質を知るには,性は切り放せない課題のようだ。
私が得たヒントは沢山あるがそれもいつものようにフレーズで紹介するとして,特に私自身が「うっと」思ったヒントをいくつか簡単にまとめて羅列したい。 人間関係に特効薬はない,過去の有効な成分をソシャクして変質させれば独創つまり最初はマネからということ,人間性洞察の達人はその人間の反省力にある,楽しむものが現在自分にある人間は感謝すべき,そして,読書に一般論は無意味である。読書は自己流であり,我流である。
最後の言葉で,本当にほっとした。我流でいいのだ。
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