読み感 |
この本のテーマの「男の性解放」からすれば,何をいまさら男の性なのか,十分に解放されているではないかと思ってしまうが,筆者は性において過去の歴史を振り返りながら,男と女の性・社会での役割,両面から見た分析をこころみながら,現代社会,管理社会,男社会の行き詰まりを指摘している。 筆者の10年間のタクシー運転手としての経験からくるサラリーマン各階層のあわれな夜の生態が生々しく語られている部分は,つい仕事が趣味ですと言ってしまうサラリーマンたちの,私を含めてなにかもの悲しさを感じてしまう。 また,男の性,年老いていく性,自分の性を考えたとき,果たして男として自分にエゴはなかったのか。いつまで勃起力は継続できるのかとか,自分の性に対する考え方はどうなのか。人間の欲の中心である性欲について,もう一度考え直すきっかけになったように思う。 そして特に管理社会のゆきづまりを衝いた部分「管理社会はまた真実を多い隠すシステムである。一種の思考停止状態であり,自分がいま行なっている行為が何を意味しているかを自己判断する能力を奪われ,ひたすら没個性的な人間になることを要求される。」,物質優先の現代社会の行き詰まりをついた部分「あらゆる価値に<もの>が介在することで人間的な価値が<もの>に吸収され人間関係が途切れていく。」男社会の行き詰まりをついた部分「現代社会は男だけでは手に負えなくなっている。いわば男が蒔いてきた悪しき種が積もり積もって身動きがとれない状態に陥っている。」「人間の命を軽視する男社会の論理は,当然のことながら環境汚染や自然破壊を増長していく。」にうなづけるものが多くあった。 21世紀は「女に蓄積されている闘争心,あるいは忍耐力や意思力は,今後男を凌駕していくにちがいない。」にあるようにますます女性の「性」が台頭していくことには間違いない。 それは家庭の中の息子と娘,社会における女性の活躍ぶり,先進国での女性の活躍ぶりをみれば流れは確実にその方向にある。 |