読み感
  • ヘルマン・ヘッセ作:人は成熟するにつれて若くなる
ノーベル文学賞受賞者ヘルマン・ヘッセ、詩人であり、作家といっても私はヘッセという人物がいたという程度しか知らない。「人は成熟するにつれて若くなる」というテーマにひかれてということになる。
筆者の人生の後半部分の40年、人生の再出発をするため、ドイツからスイスのアルプスヘ移り住み、平和な田舎生活、自然の移り変わり、季節の変化、植物、鳥、年老いての友人、人間の動き、特に「老いの眼」から見た若者の姿、その裏腹になる「老い」と「死」を詩とエッセーという形で素直に表現している。
「成熟するにつれて人はますます若くなる。すべての人に当てはまるとはいえないけれど、私の場合はとにかくその通りなのだ。私は少年時代の生活感情を心の底にずっともち続けてきたし、私が成人になり老人になることをいつも一種の喜劇を感じていたからである。」のフレーズにあるように、40代の後半になった私自身も、少年時代の思い出、あのころ大切にしていたものが、いつも頭の中に残像されているように思う。
ところでヘッセが生きた後半部分の平和な時代とは少し違う頽廃した怠惰でわがままで自分勝手ないまの平和な時代、死生観が定まらぬのは私だけではないだろう。老いの結果が死であり、死はいつも隣り合わせに住んでいる。ヘッセは人生の最終段階の老いを鋭く見つめ、楽しんでいるように見える。
老いという少しかすんだ眼で見つめた多くの出来事を私たちにこの世の贈り物として沢山届けてくれている。
私がもう少し感性が豊かであれば、詩のフレーズに多くの感嘆する部分があるのだろう。残念ながら、ものごころついたころから忘れ物のポケットに入れてしまっている。とはいいながら、老いについて、死生観について、学ぶべきことは多くあった。


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