読み感
  • 佐江 衆一作:老い方の探求
日本人は死についてあまり語ることことをしない。筆者は「黄落」の中ですさまじい人間の本能・本性、年老いた両親を誰が見るのかさしせまった緊迫感から、介護現場の臨場感が生々しく伝わってくる作品を書いているが、この作品には母がなくなり、「父の死」を看取る筆者には、大きな山を越した安堵感があり、余裕さえ感じる。
筆者自身の死の迎え方、高齢世代に向って自分はどうしたいか。一休と盲目の美女森女、良寛と貞心尼の話は年老いても異性に興味を持つ坊さんを紹介しているが、父の年老いての恋を見て、自分も内心そうありたいと思っているのではないだろうか。
一休禅師言葉:ふたたび 「よの中はくふて糞してねて起きてさてその後は死ぬるばかりよ。生まれ来てその前生を知らざれば死にゆく先はなほ知らぬなり、生は仮の宿であり、死も空、死後は知らぬという。」


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