読み感
  • 中村仁一作:幸せなご臨終
題名からしてあまり触れたくないものがある。宗教心の薄い私を含む日本人にとって,死とかご臨終とか,生あるものはかならず死を迎えるにもかかわらず,特に病院で死を迎える人が多くなったせいか,できるだけ避けたい言葉となっている。
50歳を前にして昔なら寿命のつきる時期,自分の人生を振り返り整理する時期にとてもいい本に出会った気がする。いかに終末期を迎えるか,多くの示唆を与えてくれる言葉があった。
一方で医療現場に直接携わる医師・看護婦には耳の痛い,現代医療のあり方論,患者の側に立った考え方なども多く出てくる。少し抜粋してみると,がんは原則として告知すべき,抗がん剤は使用しない,老人のがんは手術すべきかどうかを10円玉の裏表で決める,
ソリブジン(抗ガン剤)薬害事件の医師としての責任,医師は「頼るな,任すな,利用せよ」,「医師におまかせ」の時代は終わっている等である。
自分ががんになったなら告知してもらうか,告知してもらってたえられるのか,はなはだ疑問である。
現代のように30歳すぎればみんな人間ドックに入り健康に気遣う時代,昔に比べ食と生活習慣が大きく変わり,すべてにおいて贅沢・怠け者になり,成人病という慢性疾患・治らない病気が主流になっている時代だだからこそ,病気に対し患者としてどうすべきかは,筆者が言うように自己決定権限を大いに発揮し自ら治療法を選択すべきではないかと思う。


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