読み感
  • 門野晴子作:いつのまにか私も「婆あ」
最初から最後まで率直弁で一気にぶっ飛ばしている。毎日、ドタバタしながら介護における社会福祉制度の矛盾を指摘、娘のつわりにもつきあってアメリカを往復、オムツを嫌うわがまま婆あのおかげで家中糞まみれ、本当に話題に事欠かない家庭である。
いろんな問題が次から次へと発生しながらもなんとか切り抜けるストレスを溜めながらも、どんどんはきだしていく。介護疲れの主婦・女性達にとっては胸のすくところがあるのではないだろうか。といっても現実に介護する女性達が介護から解放されるわけではない。
この本の中で介護についていい方向性を指摘している。「ケアは他人の専門家が行うべきであり、その仕組みを作るのが政治と行政である。」「共同生活介護システムを作り、”自助努力”を家族や個人に帰するのではなく、市町村コミュニティに帰し、コミュニティの家族がケアプランや運営に参加・・・」いまの日本という国の中ではこういった介護システムが必要だと思う。
一方で高齢者社会においては、性と生の関係は切り離せないことでもある。この2千年、男社会ですべてのものごとが動いてきた。男の性はひたすらペニスをヴァギナにインサートし女性のよがり声に満足することだけを考える。しかし女性の目からは、「性器を愛するのではなく相手の人格を愛するのだから」「ひとりのセックスにしろふたりのそれにしても、オーガズムで血行を活発化させ、ホルモンの分泌を豊かにすることこそ健康の基本に違いない。」といった見方が出てくるのである。
いずれにしても高齢化社会は年よりといっても仕事をもち「誰のためにでなく自分のために、性と生を豊かに生きることこそ”老いの自立”といえると思う。」の一文の通り一人一人が自立することこそが、これからの時代を生き抜くキーワードではないだろうか。


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