今週の気まぐれ本

 

ブック名

空海に学ぶ仏教入門<その3>

著者

吉村均

発行元

ちくま新書

価格

800円(図書)+税

チャプタ


@空海の生涯
A伝統的仏教理解へ
B苦しみを減らしていく段階
C苦しみを根源から断ち切ろうとする段階
D空を体験した者に現われる世界
E言葉を超えたさとりの境地が直接示される段階
F終章:道としての仏教
 

キーワード

輪廻からの解放、言葉で教えを説かない、心の認識、心のあり方、心のメカニズム、さとりを開いていない、仏陀の境地、悪人正機の意味、実体視、瞑想前後差がない、五十三人の菩薩

 

本の帯(またはカバー裏など)

苦しみから離れることができないのは、欲望のままにものを追いかけ続ける心のあり方にその原因がある

かってに感想(気になるフレーズ)


空海の本の著者は、多くが僧侶である。
しかし、この入門書の著者は少し違うようだ。
だからなのか、実に分かりやすく解説してくれているのだ。

「第四住心では、自分を構成している五蘊は実体だが、それによって構成されている『私』は実体ではないと理解して、輪廻からの解放の境地を目指します」
「第五住心の実践とする趣旨・・・言葉で教えを説かないのが独覚なので、直接、独覚の悟りを説いた経典はありません」
「仏教は心の認識のメカニズムに苦しみの真の原因を見る教えで、自分が訓練して心のあり方を変える必要がある」

「それぞれの理解力や関心に合わせて輪廻からの解放を目指す三乗の教えー第四唯蘊無我心、第五抜業因種心、第六他縁大乗心」
「仏教が言葉を伝える伝統ではなく、言葉を使って言葉を超えた境地を伝える伝統で、仏教が問題にする心のメカニズム自体は、時代、地域を越えたものである」
「仏教は基本的に、すでにさとりを開いた仏陀が、まださとりを開いていない私たちに合わせて、私たちの視点から仏陀の境地を目指すという方向性で説いたものです」

「瞑想中・瞑想後を行き来して修行を深め、最終的に瞑想中と瞑想後にまったく差がなくなったのが、修行が完成した仏陀の境地、『色即是空、空即是色』です」
「阿弥陀仏が誓願を立てたのは、自分の修行によってはその境地に至ることができない者のためだ、というのが悪人正機の真の意味です」
「私と私が捉えている世界を実体視して疑わないのが、仏教の考える苦しみで、過去・現在・未来というのも、私が捉えている捉え方でしかなく、過去も未来も、現在も、探してもこれこそがそれだというものを示すことができません」

「空性を体験した菩薩たちは、瞑想中における空性と、瞑想を終えて再び意識が対象を捉える世界を行き来しながら修行を進め、修行が完成された仏陀の境地においては、瞑想中と瞑想後の差がまったくなくなる、といわれています」
「第八会は祇園精舎で、善財童子の求法遍歴、文殊の勧めにより様々な菩薩を尋ね、五十三人の師から教えを授かる旅が描かれます」
「東海道五十三次、東海道に五十三の宿場町が設けられたのは、この『華厳経』『入法界品』に基づくといわれています」