〜〜突然やってきた寝たきり老人(H9.6.2)〜〜

平成5年8月、母は以前から、パーキンソン病の薬を服用していたが、 事故の起こる1週間前からこの薬を飲むと調子が悪いと服用を止めていた。
ある日の夜中、トイレを済ませ、 いつものように壁づたいにある棒をたよりに寝室に帰ろうとしていた。
なぜか上がる必要のない階段で倒れ顔面を強打。

10日程度の入院で済んだが。
その後二度と自分から起き上がろうとしなくなった。
この日からエミ姉ちゃんの介護が始まった。
あれからすでに4年目が終わろうとしている。
この日記はその介護等の記録である。

(パーキンソン病)
この病は「レオーネの朝」という映画をご覧になった方には、 すぐ想像がつくかもしれない。別名震とう麻痺ともいわれている。
手指に常に震える症状、頭を前にだし、胴、膝を曲げた特異な屈曲姿勢を取り 、歩行は小刻みになる。
母の場合、倒れた後、体が硬直状態で手指が小刻みに常に震えている。
典型的な老人病である。

(介護用具の解説)
多くの人は介護は自分に関係ないと思っている。
しかし、人間だれしも年を重ねれば、かならず老いはやってくる。
口は出すが金は出したくない。
21世紀日本は急速な少子高齢化社会を向かえる。
厚生省の推計では、 2010年に介護を要する人は390万人ともいわれている。

(エアーマット)
寝たきりになると、寝返りが自分でできなくなる。
人間ストレスがたまるとす ぐ胃腸にくるように、寝たきりになるとすぐに背中、腰等の部分に床擦れが できてしまう。
ベッドの上にマットを敷き、そのマットに常にエアーを24時間送っている。
介護用具として絶対に欠かせない。
因みに、お値段はベッド12万円、エアーマット7万円(H6年価格)





〜〜寝たきり痴呆(H9.6.7)〜〜

痴呆の三大症状には、物盗られ妄想(幼児にかえる)、失禁、徘徊がある。
また、その原因には、脳血管障害とアルツハイマー病がある。
母の場合、パーキンソン病から寝たきりとなり、人間寝たきりになって体を動かさなくなると、 わがまま、幼児性の方向に呆けて来るらしい。

最近、このアルツハイマー病は、食器類のアルミニウムがイオン化して体内に残り、 最終的に脳に蓄積して引き起こされているのではないかとの議論が波紋を広げている。
日本では呆け老人の30%がこの病気と見られている。
エミ姉ちゃんと母との会話はこんな具合である。

母は寝たきりで体が思うように動かせないが、耳がよく聞こえて口が達者である。
転倒してからの1年間は、昼夜関係なくエミ姉ちゃんは呼ばれたのだ。
「なあに……」と聞くと、「連れて帰ってください」、
「どこへ」、「おうち」、
「自分の家に決まっとるじゃろ」。

この会話も4・5回目になると、「連れて帰ってください」、 「何をよんで、ちゃんと家に居るが、ええ加減にしられ」となり、 さらに繰り返されると黙って無視する以外にない。
この会話のパターン数は減ったものの、今も全く変わっていない。

(アルツハイマー病)
はっきり言ってまだこの病の原因はわかっていない。
この病でなくなった人の脳に通常では考えられない、アルミニウムの蓄積が見られる。
老化に伴っておこる脳の退行性変化の結果、見られる老年性の精神障害。
アメリカ前大統領レーガンも、この病と闘っていることを宣言している。





〜〜介護法案(H9.6.14)〜〜

5月衆議院で介護法案が可決され、参議院で可決されれば、成立の運びとなる予定であった。
6月今国会での成立は微妙との記事が掲載され、継続審議となる方向性が高くなった。
日本は21世紀未曾有の少子高齢化社会へ向けて、急速にスピードをあげている。

この法案が成立すれば、各市町村が企業経営並みの行動力を発揮して、 人材を集め、アウトソーシングすべきところはアウトソーシングを行う等、 21世紀の福祉は市町村の実力にかかってくる。
市町村の手腕によって、福祉の差別化・格差が生じ、 老後は福祉の充実した市町村に移転する老人移動が始まると私は予測している。

エミ姉ちゃん曰く、「制度ができても、上手に平等に制度が利用できること、 手続きが簡単なこと、そうならないと遠慮して利用しない人が多いと思うよ」
母の場合、ショートステイの利用、訪問看護の手続き等すべて、3カ月ほど入院したことのある 〇〇病院が代行手続きをしてくれたのである。
ただしばらくして、赤旗1カ月購読の依頼があり、断れず取ることとしたのだ。





〜〜病院入院のこと(H9.6.21)〜〜

母が倒れて入院。
寝たきり老人になるか、日常生活に支障なく動けるようになるかは、 入院先の病院の対応が重要であったことが退院した後で分かる。

「情けは人のためならず」という言葉があるが、 入院時に回復後の日常生活が不自由なくこなせるようになり、 リハビリのプログラムが用意され、病院の先生、看護婦が一体となってやっているかどうか。
どうも母が入院した病院では、患者をできるだけ早く退院させ、 ベッドの回転数を上げることに力を注いでいたようである。

今から考えれば、たった2週間の入院で本人が嫌がるが、 一生懸命起こして食事をさせてくれた看護婦さんが、いい看護婦さんなのである。
患者本人が痛い痛いと言っているから、ついつい患者の立場に立ってしまう。
もちろん動かなければという本人の意識も大切であることはいうまでもない。




〜〜めっきり弱くなった母(H9.6.28)〜〜

「もう4年か、こんな状態の母でもおらんようになれば、寂しいだろうな」とつぶやく。
母はエミ姉ちゃんの前では、子供のように振る舞うが、時には生死の境を行き来しているのだろうか。
最近、母はあまりしゃべらなくなったという。

でも、時々隣の犬が吠えると大声で「やかましい」とか「うるさい」とおっしゃる。
でもその回数もめっきり減ったという。
3回の食事の時間も顎の力が弱くなったのか、1回の食事時間もかなり長くなったという。
エミ姉ちゃんの家には、現在二匹の猫がいる。

過去二匹の猫が突然家にやってきて住みつき、生命を全うする時にまた突然いなくなる。
いま居候している三毛猫の名前は「プーニャン」であり、黒猫は単に「クロ」である。
猫は放浪性があるため、犬のように市町村に登録する必要はない。

時々外出してはねずみを捕ったり鳥をとったり、野生そのものである。
冬から春には母のベッドのうえで一休みをよくされる。
猫も病気をする。私も四度ほど犬猫病院へお連れもうした。
保険が効かないので、治療費は人間の時よりかなり高くなる。
人間様のように、「ここが痛い」こそ言わないが、
鳴き声やお出かけの際の動作でその日の調子がわかるとか。

介護する人間にとってじっと家にいる時間が長くなるのは、つらくてもいたしかたがない。
エミ姉ちゃんが一息入れられるのは、猫たちの跳んだりじゃれたり鳴いたり、
そんな可愛い仕種のようである。
因みに介護を必要とする動物は、自然界では人間様だけである。





・メニューへ(ここをクリックしてください)