今週のおすすめ本 |
ブック名 |
こころの処方箋
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著者 |
河合隼雄 |
発行元 | 祥伝社 | 価格 | 420円 |
チャプタ |
55章からなる::好きなチャプタ Aふたつのよいことさてないものよ C絵に描いたもちは餅より高価なことがあるbr> Iイライラは見とおしのなさを示す 22.自立は依存によって裏づけられている 23.心の新鉱脈を掘り当てよう 34.どっぷりつかったものがほんとうに離れられる 37.一人で二人,二人でも一人で生きるつもり 43.家族関係の仕事は大事業である 54.幸福になるためには断念が必要である |
キーワード | こころはわからない |
本の帯 | 「耐える」だけが精神力ではない。心の支えは,時にたましいの重荷になる・・・ |
気になるワード ・フレーズ |
・ふたつのよいことがさてないもの,とわかってくると,何かよいことがあると,それとバランスする「わるい」ことの存在が前もって見えてくることが多い。それが前もって見えてくると少なくともそれを受ける覚悟ができる。 ・イライラは自分の何か−多くの場合,何らかの欠点にかかわること−を見出すのを防ぐために,相手に対する攻撃として出てくることが多いのである。 ・自立は十分な依存の裏打ちがあってこそ,そこから生まれてくるのである。 ・親が自立的であり,子どもに依存を許すと,子どもはそれを十分に味わった後は,勝手に自立してくれるのである。 ・人間のこころのエネルギーは,多くの「鉱脈」の中に埋もれていて,新しい鉱脈を掘り当てると,これまでとは異なるエネルギーが供給されていくようである。 ・他人に対しても,心のエネルギーを節約しようとするよりも,むしろ,上手に流してゆこうとする方が,効率もよいし,そのことを通じて新しい鉱脈の発見に至ることもある。 ・本当に離れるためには一度どっぷりつかることが必要である。このことは人間関係ばかりに限らない。趣味などにしても一度どっぷりつかると,それと適当な距離をとれるようになる。中途半端なことをすると「心残り」がするのである。 ・一人で楽しく生きている人は,心の中に何らかのパートナーを持っているはずである。もちろん,そのパートナーは人によって異なる。「内なる異性」のこともあろう。母なるもの,父なるもの,かもしれない。「もう一人の私」と表現されるかもしれない。ともかく「話し相手」が居るのである。 ・家庭のことは家庭のこととして,覚悟をきめて「新しい心の鉱脈を掘り当てる」と,職場のことも家庭のことも両方楽しくできるようになってくる。まず家族関係のことが「大事業」であるという覚悟がいるのである。 |
かってに感想 |
10年前に連載されたものの文庫本化である。21世紀は「こころの時代」と
言われているが,人の心はつかみどころがなく,病んだ心への処方箋は同じ症状
であっても対応の仕方は人によって異なり,マニュアルどおりにはいかない。 それは,サラリーマンで転勤生活を続け,多くの人間関係を経験している人な らだれしも納得できることだろう。 この本を読めば心の問題が100%解決するというものでもない。 筆者の講演の集約作品「こころと人生」を読んだ後,いらいらしたものや不安 や気になること,こころにかすみがかかってみえていたものに,少し明かりが見 え,こころが軽くなった感じがした。 そして最近,頭が飽和状態で本を読みたいという気が起らなかったが,それで もと思い,本屋へ出向いて探索,筆者のこの本に出会ったのである。 内容はこころに関する55の話。どのチャプタから読んでも全く支障はない。 気になるチャプタから読めばよい。加えてとても読みやすい。筆者はユング心理 学を修めた権威者であり,心理療法家として,長年多くの悩める人たちの相談に のり,すべてとはいかないまでも多くの道しるべを示してきたことが分かる。 最初のチャプタで「人の心などわかるはずがない」と筆者がいうように,他人 の気持ちなど,わかったような顔をして対応する人がいるが,実際のところはつ かみどころがないのである。 だから,こころの問題は,学校の勉強のように,100%正しい答えを期待す ることは無理なことがわかる。 相談相手となる人にとって大切なことは,100%正しいことを出すことでは なく,とにかく相手の言うことを根気よく継続して聞くことのようである。 筆者のこの作品は,チャプタの言葉で自分が不安や気になっていることをズバ リ見透かされているようでどきりとさせられる。そして,その内容を読んでほっ としたり,元気づけられたりする。この本の中には不思議に元気の源がある。 特に何度も読み返したチャプタは「自立は依存によって裏づけられている」「 心の新鉱脈を掘り当てよう」「家族関係の仕事は大事業である」の3つは私にと ってとても大切のことのように思えた。 |