今週のおすすめ本


ブック名 人間「うつ」でも生きられる
著者 谷沢永一
発行元 講談社 価格 1575円
チャプタ @あなたも私も「うつ」が好き?
Aえらいこっちゃ,「うつ」がきた!
B若さゆえ悩み,「うつ」ゆえ苦しみ
C私の「うつ」撃退法
D「うつ」をあなどるな!
E「うつ」の向こうに青空が
F初めての神経科通い
G疲れたら好きなだけ休めばいい
H「うつ」のどこが悪い!

キーワード 新しいことへのチャレンジ,配偶者,休息,上昇志向
本の帯 他人事ではない,笑い事ではない。「うつ」はいつ何時やってくるかわからない。だから元気なときにこの本を読もう人間通・谷沢流の「うつ人生も悪くない」
気になるワード
・フレーズ
・酒というのは,気分のうっ屈を,限られた時間であるにせよ救ってくれる効能がある。うつ症体質の人は酒飲みになることが,長期的治療法として有効なのではないだろうかと私は思う。
・自分の周囲の状況が「いま自分を必要としている」と考えられるときにはうつにはならないが,「自分はいてもいなくても同じだ」と思うような場合がいちばん陥りやすいのである。
・現代社会は加速度的に変化しており,大人も子どももその流れから取り残されないようにと,どこか緊張のうちに日々を過ごしている。休日になればなったで,どこかへ遊びにいったり,何かをしていないと,自分は休みを楽しむ能力もないだめな人間のように思えてしまう。本当に心を休ませ,ほっとできる時間をもつことが非常に難しくなっているのである。
・うつ症というのが,人間の頭脳に発生する一種の異常現象であり,なんらかの影響で脳の働きがノーマルな状態でなくなることをいうからである。
・うつ症は上昇志向と密接に結びついており,それが満たされている間は症状として現れない。ただ,そういう人も上昇している間に精神的に疲労がたまり,その希望がかなった途端にうつに陥ることがある。
・うつの場合はやや快方に向かうと,自分の現状の惨めさというものがある程度見えてくる。そうすると「なんと情けない」という思いが強くなり発作的な行動を招いてしまうのである。
・それまでの医師は,調子が悪いというとどんどん薬をふやしていき,多いときには鞄いっぱいに入りきるかどうかというほど持ち帰ったこともある。ところが,石島先生はなかなか薬を出さないうえに,少しでも調子がよければ「これを削りましょう」「あれを減らしましょう」といってなんとか薬を飲まずに通常の状態に戻そうとする。
・不安なことが少しでもあると,物事を悪く悪く考える人がいるが,それは自分で自らの道を断ってしまっていることに等しい。生きている以上,不都合があってもそれを抱えて進んでいかなければいけない。不都合にとらわれ,立ち止まってしまうわけにはいかないのだ。体力の衰え結構,うつも結構。両方とも自分が飛ばしすぎているというサインなのだから,悲観することはない。疲れたら,好きなだけ休めばいいのだ。
・いろいろ問題はあるが,とにかく医師に診療を受けなければ,うつは治らない。自然に治ることを期待していては,いつまでかかるかわからないのだ。専門の医師なら,その患者に即応した投薬をしてくれるので,まず医師にかかることである。
かってに感想 おそまきながら,昨年わが企業にも精神的な病に対するケアの相談窓口ができた。
 企業の中では,仕事上の問題や人間関係,また家庭の中では夫との関係,妻との関係,こどもの進路問題,しつけ等ストレスとなる事項に事欠かない現代社会。
 石を投げればかならずこの病の人にあたるごく一般的な病気なのであるが,精神的・・・病というだけで,社会や企業に遠慮しながら,怠け病として嫌がる内なる自分を叱咤激励し家事に,会社奉公にと・・・頑張りすぎている人は多いと思われる。
 特に「うつ」病は「どの人も生涯のいくつかの時期において,うつ症にかかる可能性があることだ」と筆者が言っていることからもごく普通の病なのである。
 ところが,だれにも相談できずに結果として,発作的な自殺へと追い込まれている40代から50代の自殺は,現代の悩めるひとつの社会現象となっている。
 そういった意味からも,筆者が繰り返しかかっている自らの「うつ病」体験をもとに著したこの本は,うつに悩んでいる人たちを勇気付けるいいフレーズが盛りだくさんである。
 筆者の繰り返しの体験談からの症状等から,私自身の過去を振り返ってみると,それらしきことはあったように思われる。ただ筆者のように長期に亘ることはなかったようである。
 これは,「自分はいてもいなくても同じだ」と考えたことがあまりないことや「あまり律義で物事を堅苦しく考える性格の人」でもないからかもしれない。筆者のように常に目標というハードルを高く設定することがないことや,危なくなると酒を飲んでみたり,何もせずに食べたらすぐ寝たり,やらなければいけないことはほっとくということができるようになったからかもしれない。
 加えて,妻からいつもそんなに「こだわらなくても・・・」と言われ続けた結果の産物かもしれない。
 筆者のアドバイスには「うつ症のときはうつの本を読むな」「本は読んだら片っ端から忘れろ」「マイペースの体得」「うつには何百もの段階がある」「抗うつ剤をもっと評価すべき」「サインを見逃すな」「気の強い配偶者が危ない」「環境を変える大切さ」「うつは充電期間」といったフレーズは,将来に備え,ぜひ参考にしたいものだ。
 そして,危なくなったら「疲れたら好きなだけ休めばいいのだ」というフレーズを遠慮なく実行するようにしたいものである。
・人生論へもどる