今週のおすすめ本 |
ブック名 |
仏像の声 |
著者 |
西村公朝 |
発行元 | 新潮文庫 | 価格 | 499円 |
チャプタ |
@仏の慈悲 A仏の説法 B思惟の仏 C仏の救済 D心に宿る仏 |
キーワード | ・仏の姿、死後の世界、現世の世界 |
本の帯 | 仏さまって、なんでこんなポーズしてるの? |
気になるワード ・フレーズ |
・不動明王を買いたいと言った若者は「見ているとなぜか体の中からエネルギ
ーが湧いてくる。これからの人生で新たな決意をし、スタートを切ったその心
を失わないためにも、この恐い顔で自分を叱り、それでいて力づけてくれそう
な仏像をいつも身近に置いて励みたい」 ・彫っているときは無我無心で彫れるという、そういう心境の持ち主でないと 信仰の対象となるような仏像は造れないのです。 ・右手は仏教でいう”慈悲”の慈のほうで厳しさ、左手は”慈悲”の悲のほう でやさしい愛情です。 ・まず一切のこの世のものはみな仏だということ。羅漢像になった石も、家の 土台になった石も、目につきやすいかどうかの違いがあるだけで、どちらも仏 として人を守っているということで同じなのです。 私たちも、この世に生まれてきたということは何かの役目を持ってきたという ことです。 そのためにも自分が今、実際に何かの役に立っている人物になって いるかどうか、ということも考えなければいけないし、何かの役に立つという チャンスを自ら放棄していないかということなど、この石からも教えられるの ではないでしょうか。 |
かってに感想 |
学校の課外授業で行った遠足、修学旅行、会社勤めをし始めてからの社員旅行。 観光目的の旅程にかならず寺巡りがある。 その寺巡りで由緒ある仏像についていろいろ説明を受けたのだが、ほとんど記 憶に残っていない。 なぜだろう。金箔がはられた姿、像の大きさ、耳の大きさ、手の長さ、厳しい 表情、やさしい表情、蓮台に坐した像・立った像、百の顔、千の手、背の光輪。 その種類の多さにいつも感心していたような気がする。 すべてに死と隣り合わせの世界、厳粛さとか荘厳さからくる一種独特な雰囲 気を感じていた。 新興宗教団体の中には、やたらでかい仏像を作って、ただ人を寄せ集めるだけ のためにといったものがあり、このようなものをみるとやはりあちらの世界も 金次第かという感じを抱いてしまうのは私だけだろうか。 この本を読んで仏像にはそれぞれ、顔の表情、手の形、姿、手足の位置、手足 の組み方、それぞれに意味があることを知った。これからはそういった目で鑑 賞できるようになれそうだ。 僧であり、仏師でもある筆者のイラスト入りの解説は実にわかりやすい。 「仏作って魂入れず」という言葉があるが開祖の考えが、仏師により仏像に表 現されているかどうか、信仰できる対象物なのかどうかは、眼力のない凡人に は判断がつきにくい。 ただ、この本を読んだことで仏像の見方が変わってくることは間違いないだろ う。 特に印象に残っているフレーズは、「仏像がその形から人々に伝えようとして いる、仏教の神髄、仏の慈悲の心には変わりはないということです」である。 そして、仏像の姿に三種類あり、結跏趺座は「まあ坐ってよく考えろ」、半跏 趺座は「一度とりあえず行動を起してみろ」、そして、立像は「決断を下せ」、 と迷いの多い凡人にそれぞれ語りかけているという。 ただ、その姿をあらためて観察したいのだが、老いを重ねた現時点では、自分 でそのチャンスを作らない限り、お目にかかれない。 仏像の姿には釈尊が王子の頃の姿(菩薩)、悟りを開いたときの姿(如来)、 武勇に優れていた勇ましい姿(明王)、そして釈尊のそばにいた妃、家来、侍 女たちの姿(天部)を表現したものらしい。とはいうもののやはり現時点の自 分の目で観察したいものである。 いずれにしてもこの本は、死の世界や仏教の世界を学んでみたい人や仏像を描 いてみたいと思う人にとっては大いに参考になる。 |