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江戸幕末期の無名の歌人に橘曙覧(たちばなあけみ)という人物がいる。
「『たのしみ』な生き方」神一行著の中にこう書かれている。
「市井の中でひっそりと、自然を愛し、家族を慈しみ、利欲を求めず、
かといって世を恨むことも愚痴ることもなく、ただひたすら自分の魂に
忠実に生きた人」
また、こうも書かれている。
「たわいない日常生活のすべてを『たのしみ』に変えてしまう心をもち、
人生を楽しく、充足して生きた人」
欲望の塊のわれら現代人には、
どれをとっても、なかなかマネができないことなのだが、
でも彼の「たのしみ」の見つけ方は、
自分のこころの持ち方次第だということなのだ。
そこで考えた、焼きものの「たのしみ」ってなんだろうと考え続けてみたいのだ。
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@ 「マイ焼きもの」が作れること。
A粘土をいじって成形していくと、気分がだんだん落着くこと。
B焼きものの形と自分のこころのバランス感覚が養えること。
C自分の思い通りに作れない歯がゆさと、作れた時の楽しさが味わえること。
D仲間にうら若きそれも美しい女性が多いこと。
E二度と同じ形のものができない、手びねりの楽しさ
Fどの焼き物を作るか、それを適当に選んで、それが形になっていく楽しさ。
G陶器をキャンパスにしてへたな絵を描く楽しさ。
H仲間の作品を見ながら、「ワイワイガヤガヤ」という楽しさ。
Iなんだかんだと言って使ってもらえる楽しさ。
J釉薬でどんな色にすれば気に入ってもらえるかを考える楽しさ
K粘土をいじっていると体が熱くなり、奥歯に力が入って知らぬ間に楽しい時間を 過ごしていること。
L動物作りを始めてから、なぜか「楽しみ」が増えた。 動物をある動きで止まった状態で考えるのだが、 できあがった3D形が自分の思い通りのものになったとき、微笑んでしまう。
M動物作りで「癒し形」と言われたときのなんとも言えぬ気持ちよさ
N小さな店でお客さんから「ファンだよ」「遊び心があるね」と言われる気持ちよさ
O動物形を創ったとき、一晩寝かせて、翌日保存箱を開けてその作品を眺めたとき
Pモノが残る楽しさ
Q作品を買ってくれたり、貰ってくれた人から感謝の言葉やいいコメントが貰えたとき
R作品の構想を考えて、成形活動が始まった時
S本焼きのためにコンポーネントを考えるとき
21.『懐かしさ』が出てるとき
22.「のみ」を使用し、乾燥造形を削っているとき
23.新しい粘土や手法などを使用したりやってみたりして、それなりにできあがったとき
24.「ピカソは、陶器に施された彩色が鮮やかなまま変化することがないところに着目した。・・・
百年たっても作家が描いたままのイメージを正確に伝えてくれるものだったからである」(加藤唐九郎)と書いているように、
仮に不燃物としてゴミに出され、埋設される。やがて、現人類滅亡後、新人類?が掘り起こしてくれるのがいいかも。
25.コンペで構想創作したわが作品が、それなりに賞の栄誉を得たとき
26.展示会終了後の梱包をみんなでやって無事終えたとき
27.作品にネーミングし、そのネーミングがそれなりに受けがよかったとき
28.ずっと考えていたアイデアがラフスケッチにおとせたとき
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<<人間国宝「伊勢崎淳」氏の話(2004.9.11NHK放送19.30分>>
伊勢崎氏は30歳を前に、 県重要無形文化財の父と同じく陶芸家の兄に比べ自分の特徴がないことで壁に当たっていた。
そこから脱出して、どんなことを始めたかという話。
@備前焼に黒の釉薬を取り入れた
A粘土の調合を変え、1200℃で焼き上がったものを一気に冷却し、 新しい色を出す。(いままでの粘土だと急冷却では割れてしまう。)
B新しい土を探した。
C晩年の「イサム・ノグチ」の作品から、「素材」を生かす(あまり加工しない) 方法を学び、取りいれた。
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<<松永伍一氏の趣味話(2005.1.11読破:『金の人生銀の人生』から>>
「趣味はノルマのようにして頑張ってやり遂げるものではない。ゆとりのある時間を楽しむ ものだから、ゆとりを殺す方向に走ってはならないだろう。仕上げたものをながめて、自分でほめ
言葉をかけることも大切」さらに続ける、 「自分でほめて、面白いと思ったら人に見てもらうという順序になろうか。・・・ 人に見せることによって生まれるゆとりを私は大事にしている」
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<<辻晉堂の話(2020.11.10日曜美術館>>
作るものの大きさも以前のようにむやみに大きなものを作ろうとしない。
焼き物は自分の両手で持ち上げられないようなものを作らない方がいい。
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